ユーザーイノベーションで
社会に大きなインパクトを与えたい
ユーザーイノベーションで
社会に大きなインパクトを与えたい
浜田 裕一郎講師
経営戦略やオープンイノベーション
&ユーザーイノベーション
営戦略やイノベーションの研究に携わりながら、会社経営者としてもコンサルティングやマーケティング、プロモーションを手がけている浜田講師。研究者と経営者の二刀流で、ソーシャルメディアなどWEBの影響によって注目が高まりつつあるユーザーイノベーションの研究を深めています。目指しているのは、そのプロセスを“見える化”すること。ゆくゆくは、社会にインパクトを与えられる商品やサービスを生み出したいと考えています。
ユーザーイノベーションは、
今の時代に合った商品やサービスの開発手法
経営戦略やイノベーションに関する研究を行っている浜田講師。インターネットの発展やSNSの普及によって世界中がつながりやすくなった時代において、あらゆる商品やサービスはどんどん進化し、消費者のニーズも多様化しています。そんななか、商品やサービスを開発するうえで、ひとつの会社ですべてのプロセスを完結させる「垂直統合モデル」では、対応しきれなくなってきているといいます。
「今の時代に合った商品やサービスの開発手法として注目されているのが、他の企業や消費者と協力して新しい価値を生み出すオープンイノベーション。なかでも特に、生活者の視点やアイデアをもとに開発する、ユーザーイノベーションにスポットライトが当たっています」
消費者の声が大きな影響力を持つようになったSNS社会において、特にユーザーイノベーションの重要性が増しているのだとか。そこで、浜田講師は今の時代におけるユーザーイノベーションのプロセスに着目しました。
「ユーザーイノベーションについて議論されるとき、企業側ユーザー側どちらにその発生地点が存在しているのかという議論と、いかにしてユーザーイノベーションを創発するのかといったプロセスとしての議論が混同されるケースが多いのが現状。私は、これらを分けて議論する必要があると考えています」
また、これまでの研究ではユーザーがどのように商品やサービスを開発するかのプロセスに焦点を当てすぎていて、イノベーションがどのようにして社会に浸透するかまでは十分に議論されていないのだとか。
「イノベーションと同じく、マーケティングにおいても個人がフォーカスされる時代。個々のユーザーがどのようにして世の中に影響を与えるか、その可能性を考えていきたいです」
経営学という観点から社会的な事象を分析し、
その仕組みを解明していく
浜田講師によると、インフルエンサーなど個人のアイデアが、社会にとって必要な商品やサービスの開発につながるという流れはさらに加速していくとか。
「4~5年間の話ですが、私の紹介がきっかけで大手アパレルメーカーとインフルエンサーがコラボレーションし、ある商品を開発。そのアイテムは発売と同時に即完売となり、ユーザーイノベーションのすごさを、肌で感じることができました」
ただ、企業がユーザーの声を取り入れてモノづくりを行い、社会に大きなインパクトを与えるユーザーイノベーションには、まだまだ課題があるといいます。
「企業というのは、利益を追求しなければ成長できません。そんななか、『2万人のフォロワーがいます』というユーザーの意見を取り入れたところで、『で、どれだけ売れるの?』と疑問に思う企業の方もいるでしょう。また、企業にもコンセプトがあれば、開発担当者にもプロとしてのプライドがある。企業側とユーザー側の想いを擦り合わせ、落としどころを見つけていくのは、そう簡単ではありません」
だからこそ、プロセスの研究を通してユーザーイノベーションの最適化を目指したいと、浜田講師は考えているのです。プロセスを体系化することができれば、ユーザーイノベーションの成功やさらなる普及につなげることができるかもしれません。
「経営学という観点から社会的な事象を分析し、その仕組みを解明していけるのが、この研究の醍醐味。ユーザーイノベーションの成功事例を紐解き、そのプロセスの“見える化”を図りたいと考えています。ただ経営とは、『ノウハウ通りにやれば、誰もが結果を出せる』というものではありません。しかも、経営者の想いや価値観も千差万別。そこが難しさでもありますが、同時におもしろさでもあると感じています」
ユーザーイノベーションの知識や
ノウハウはどんな仕事にも活かせる
浜田講師は、経営戦略やイノベーションの研究を行うほか、経営者としての顔も持っています。
「2008年に、コンサルティングやマーケティング、プロモーションなどを手がける会社を設立。起業してから大学に通って経営学を学び、41歳のときに博士号を取得しました。勉強や研究の成果を実業に活かすことができるのがおもしろく、仕事をしながらどんどんアカデミックな世界へのめり込んでいったのです」
今後は、ユーザーの声を集めて商品開発をスタートさせようとしているアパレルブランドとコラボレーションし、ユーザーイノベーションのプロセスの解明にさらに注力していくといいます。
「この研究を活かして、ゆくゆくは自分の手で社会に大きなインパクトを与えられる商品やサービスを世に送り出したいと考えています」
現役のビジネスパーソンとしてさまざまな案件を手がけている浜田講師のもとで学ぶことで、学生たちはゼロからプロジェクトを立ち上げ、それをマネジメントしていく力を身につけることができるでしょう。
「しかも、ユーザーイノベーションに関する知識やノウハウは、社会人になってどのような仕事に就いても活かすことができるはず。商品やサービスを生み出す仕事だけでなく、公務員になったとしてもユーザーイノベーションの考え方を取り入れることで、より地域の方々の満足度を高める行政サービスを創造することができるかもしれません。また、イノベーションを生み出すために大切なのは、常に『社会に対して何をしたいのか』『今の社会に何が足りないのか』という視点。それさえ見つけることができれば、社会変革を起こせる可能性が高くなると思います」
浜田 裕一郎 講師
高校卒業後、実家の小売ビジネスに携わる。2008年にコンサルティング会社を設立したことがきっかけで、経営学に興味を持ち、兵庫県立大学の専門職修士へ。さらに学びを深め、41歳で経営学の博士号を取得する。2024年に、政治経済学部グローバルビジネス学科の講師に就任。