

AI・異文化共修と実践的な英語力で
グローバルビジネス人材を育成
AI・異文化共修と実践的な英語力で
グローバルビジネス人材を育成
近藤 俊史講師
言語習得やコミュニケーションの知見を基盤に、
AIと異文化共修を生かす英語教育
近藤講師が研究しているのは、真のグローバルビジネス人材を育てるための英語教育です。具体的には、第二言語習得(SLA)、Pragmatics(語用論)、CLIL(内容言語統合型学習)、ナッジ理論などの知見を基盤に、英語を使って世界で活躍できる人材を育てる教育方法を探究。さらに、AIを学習のパートナーとして生かし、日本人学生と留学生が共に学ぶ異文化共修を組み合わせることで、英語力だけでなく、異文化を理解し、対話・協働する力も育む教育モデルの構築を進めています。

英語を「教える」から、
英語で「世界を広げる」教育へ
近藤講師が英語教育について研究するようになった背景には、20歳のときに初めて海外へ出た経験があります。ニュージーランドで、それまで日本で学んできた英語が現地では思うように通じないことを実感。言葉を知識として覚えるだけではなく、実際のコミュニケーションのなかで使える英語を学ぶ必要性を感じたといいます。その後、アメリカで約3年間を過ごし、帰国後は予備校講師として約12年間、英語を教えてきました。
「海外に行ってみて、日本で学んでいた英語と、実際に使われている英語には大きな違いがあることに気づきました。英語をもっと広い視点から捉えたいと思ったことが、今の研究につながっています」
その後、英語でコミュニケーションを図るために必要な「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を身につける英語教育や、海外大学への進学支援に携わるなかで、「英語を学び始める時期」や「どうすれば自然に英語を身につけられるのか」という問いを深く掘り下げるようになりました。当時在籍していた大手教育会社グループで、2019年には幼児・小学生向けの英語スクールを立ち上げ、座学だけに頼らない英語教育を実践。そこでの経験が、現在の研究の基盤となっています。
「中学生や高校生を教えているなかで、海外大学への進学を目指すにはもっと早い段階から英語に触れる必要があると感じました。そこから、言語を身につけるには何が必要なのか、どんな環境なら子どもが自然に学べるのかを考えるようになったのです」
こうした経験から生まれた問いを、現在は研究として追究している近藤講師。具体的には、第二言語習得(SLA)、Pragmatics(語用論)、CLIL(内容言語統合型学習)、ナッジ理論などをもとに、AIや異文化共修を取り入れた英語教育について研究を行っています。
「目指しているのは、英語の知識を増やすことだけではありません。英語を使って自分の考えを伝え、異なる文化や価値観を持つ人と関わりながら、世界で活躍できる力を育てることです。言葉を身につけることで、これまで出会えなかった人と出会い、行ったことのない場所へ足を運び、知らなかった世界に踏み出せる。そうした新しい出会いや経験につながる力を、学びの中で育てたいと考えています」

AI時代の今、英語教育は
学ぶきっかけを与える「場」へとシフト
近藤講師が現在の研究で特に注目しているのが、CLIL(内容言語統合型学習)です。これは、英語そのものを学ぶだけでなく、ゲームや料理、音楽など、関心のあるテーマと英語を組み合わせて学ぶ方法。社会人時代にもこの考え方を取り入れ、英語を「勉強するもの」と感じさせない教育を実践してきました。もともとヨーロッパで発展した教育法を日本の子どもたちに合わせて工夫し、英語に触れるきっかけを生み出す学習環境をつくったのです。
「勉強しなさいと言っても、子どもはなかなか興味を持ってくれません。まず興味を持てるものを入り口にして、そこに英語を組み込んでいく。そうすると、英語を学ぶことへのハードルを下げられるのです」
もう一つの研究の柱が、行動経済学から生まれた「ナッジ」という考え方です。学ぶ内容を工夫するCLILに対し、ナッジでは、子どもが自然と行動したくなるように環境を整えます。
「例えば、子どもがお菓子をもらうために英語を使う仕組みをつくれば、勉強としてではなく、自然なコミュニケーションの道具として言葉を使うようになります。『Can I get chocolate, please?』と言えばチョコレートがもらえる、というルールを設定する。すると、子どもにとって英語は勉強するものではなく、チョコレートをもらうための言葉になります。実践してみると、初めて英語を学ぶ子どもでも、数ヵ月で英語を使ってやり取りできるようになりました。そこから、『英語が通じた』という経験も生まれるのです」


近藤講師はさらに、生成AIを英語学習に取り入れる方法にも注目しています。覚えにくい単語のイメージ画像をAIに作らせたり、その単語が書き言葉なのか話し言葉なのか、どの国でどの程度使われるのかを調べたりすることで、一人ひとりが自分の疑問に合わせて学ぶことが可能に。AIに知識を尋ねるだけではなく、自分でAIを活用しながら学びを深めるセルフラーニングの可能性を探っています。
「AIを活用することで、自分では調べきれなかったことも、その場で確認できるようになります。これからは知識を覚えるだけでなく、AIをどう使って学ぶのかも大切になるでしょう。そうした変化に合わせて、英語の先生も知識を教えるだけでなく、学生が自ら学び始めるきっかけをつくる役割へ変わっていくと思います」


留学生との学びを「生きた教材」に、異文化理解を深める
近藤講師が英語教育と並んで重視しているのが、異なる文化や価値観を持つ人と学ぶ異文化共修です。前職で外国人スタッフを率いた経験を通じて、日本で働く外国人が抱える困難や、日本人が無意識のうちに持つ先入観について考えるようになりました。こうした経験を通じて、異文化理解とは外国の文化を知るだけでなく、自分たちの文化や社会の特徴を見つめ直すことでもあると考えるようになったそうです。
「異文化理解というと、日本人が外国の文化や習慣を知ることをイメージしがちですが、それだけではありません。留学生には日本の文化や社会を知ってもらい、日本人学生も外国人だからと特別扱いしたり、逆に先入観を持ったりせず、一人の人として相手を見ることが大切だと思っています」
大和大学には、中国・韓国・ミャンマー・バングラデシュ・インドネシア・フィリピンなど、アジアを中心にさまざまな国から来た留学生が在籍しています。この環境そのものを「生きた教材」と捉えている近藤講師。グループワークなどを通して一緒に学ぶだけでなく、異なる背景を持つ学生と実際に会話し、協力する経験を重ねることで、英語力に加えて相手を理解する力やチームで課題を解決する力も身につくのだとか。
「教室のなかだけで異文化を学ぶのではなく、実際にいろいろな国の学生と一緒に過ごせることに、大きな意義があると感じています。最初は言葉の壁や遠慮もありますが、そこを乗り越えて一緒に何かをする経験そのものが、これから社会に出る学生にとって大きな学びになるはずです」
AIによって英語を学ぶ方法が大きく変わるいっぽうで、人と直接関わることでしか身につかない力もあります。だからこそ、AIを学習のパートナーとして活用しながら、異なる文化を持つ人との対話や協働につなげていくことが、近藤講師の今後の目標です。
「英語が話せるようになると、出会える人も、行ける場所も、挑戦できることも増えていきます。だから、完璧な英語を目指しすぎなくてもいいので、まずは自分の言葉で伝えてみてください。その一歩を踏み出すことで、これまで知らなかった世界が広がっていくと思います」


近藤 俊史 講師
大学院では言語科学を専攻し、大量の言語データから言葉の使われ方を探るコーパス言語学に取り組む。その後、アメリカに約3年間滞在し、帰国後は予備校講師を経て、大手教育会社グループで英語4技能の指導と海外大学進学支援などに携わる。2026年に大和大学の講師に着任。