

代数幾何学と表現論を武器に、
数学の未知に挑む
代数幾何学と表現論を武器に、
数学の未知に挑む
中山 勇祐講師
有理等質空間上のベクトル束の
コホモロジーに関する研究
中山講師は、特に対称性の高い有理等質空間上のベクトル束を研究しています。大学院時代には、等質ベクトル束がACM束・Ulrich束となるための判定条件を明らかにしました。現在は、有理等質空間の対称性に着目し、表現論を用いて代数幾何学の問題を解いています。今後は、コホモロジーの消滅・非消滅など、一般の射影多様体で研究されている問題を有理等質空間で考え、新たな性質の発見や問題の解決を目指します。

取り組んでいるのは、
図形の構造を深く理解するための基礎研究
代数幾何学が専門で、大学院時代に『有理等質空間上の等質Ulrich束と等質ACM束』という論文を発表した中山講師。研究対象としているのは、特に対称性の高い図形や空間の上に、場所ごとに異なるベクトルなどの数学的な情報を配置し、全体としてどのような性質を持つのかを調べる「ベクトル束」です。特に、ベクトル束が持つ性質を読み解くための「コホモロジー」という数学的な道具を使って研究しています。
「学生時代、コホモロジーの消滅条件によって特徴づけられるUlrich束やACM束に注目し、どのような束が存在するのか、それぞれがどんな性質や構造を持つのかを明らかにしていきました」
そもそも、中山講師がこの研究に着手したきっかけはコロナ禍でした。もともとはシューベルト・カリキュラスに関する難しい問題に取り組んでいましたが、なかなか論文にまとめられずにいたそうです。
「コロナ禍で体調を崩して病院に行った際、待ち時間に別の論文を読もうと思い、中国の研究者による論文に出会ったのです。そこでは、古典型の有理等質空間について、ACM束やUlrich束の研究が進められていました。それを見て、まだ研究が進んでいない分野に取り組もうと決意。そこで目を向けたのが、例外型の有理等質空間でした。有理等質空間は対称性が高いからこそ、さまざまな数学的な問題を考えることができます。その中でも例外型は研究対象が限られており、まだ明らかになっていないことも多い。そこに研究の余地があると考えたのです」
中山講師が手がけてきたのは、図形の構造を深く理解するための基礎研究です。大学院時代には、この分野の主要な国際誌に複数の論文を発表し、着実に成果を上げてきました。
「研究を通じて、有理等質空間上の等質ベクトル束がACM束になるための条件を明らかにしました。いわば、『この条件を満たせばACM束になる』という判定の仕方を示したのです。また、Ulrich束についても、等質ベクトル束がUlrich束になるための判定条件を明らかにしました。どんな束がACM束やUlrich束になるのかを一つひとつ調べるのではなく、数学的な条件から判定できるようにしたのです」

表現論の手法を駆使し、
代数幾何学の問題を解き明かす新たな挑戦
これまでの研究では、コホモロジーの消滅条件を手がかりに、ACM束やUlrich束の判定条件を明らかにしてきました。現在はそこから一歩進み、ベクトル束のコホモロジーが消滅するのか、しないのかという問題に目を向けています。例えば、新たに取り組んでいるのが、代数幾何学と表現論を組み合わせた研究です。
「表現論を使うというのは、有理等質空間上の等質ベクトル束を放物型部分群の表現によって表し、ベクトル束そのものを直接調べるのではなく、それに対応する表現を調べるということ。つまり、空間の上にあるベクトル束を直接調べるのではなく、空間が持つ『対称性』を別の数学の言葉に置き換えることで、代数幾何学の問題を表現論の問題として捉え直し、解いていくのです」
一般の射影多様体上のベクトル束について、消滅するのか、しないのかという問題がさまざまに研究されています。そこで中山講師は、これらを有理等質空間上で考えてみたいと思っているそうです。
「つまり、一般の射影多様体で考えられている問題を、有理等質空間に限って考えるとどうなるのか、という視点から研究するわけです。有理等質空間は非常に規則性の高い空間なので、そこで詳しく調べることで、新しい性質を発見したり、もともとの問題を解決したりできる可能性があります。今後は、代数幾何学で研究されているベクトル束の問題を有理等質空間の上で考え、そこでどのような答えが得られるのかを明らかにしていきたいです」


日々、難解なテーマに取り組んでいる中山講師。難しい問題であるほど、解決できたときには大きな達成感を味わえるといいます。
「私たちの研究では具体的な計算を行うため、計算を重ねるなかで『こういう法則なんだ』とわかったり、『こうすればうまくいく』というルールを発見したりしたときに、研究の醍醐味を感じます。また、有理等質空間は代数幾何学における重要な研究対象で、表現論の手法を活用できるという特徴がある。異なる分野の理論が結び付くことで、幾何学的な問題を表現論的な視点から解明できることにも、研究のおもしろさがあります。さらに、有理等質空間上のベクトル束の研究は、一部の対象については理解が進んでいるものの、まだ手つかずの課題が多く残されている分野。だからこそ未知の問題に挑む余地があり、今後の発展が期待できる点も、この研究のおもしろさだと言えるでしょう」


未知の問題に挑み、
学生たちに数学のおもしろさを伝える
有理等質空間の研究について、あらかじめゴールを決めているわけではないという中山講師。まずは目の前にある問題に向き合い、一つの問題を解決すると、そこからまた新しい問題が生まれる。だからこそ、研究は尽きないのだといいます。
「常に新しい論文に目を通し、アンテナを張っています。タイトルを見て、どんな内容なのかを把握しながら、自分が考えていることがすでに誰かに研究されていないかもチェック。そのようにして、次の研究につながるテーマを探しています」
有理等質空間の研究には、代数幾何学や表現論などの高度な背景知識を身につける必要があります。そんななか、有理等質空間上のベクトル束の研究を通じて、学生たちは幅広い学びを得られると、中山講師は語ります。
「実際の研究では、線形代数学を用いた具体的な計算が重要な役割を果たします。そのため、大学で学ぶ線形代数学を土台として研究に取り組めることが特徴です。その過程で、抽象的な理論を理解する力と、具体的な計算を通じて問題を解決する力の両方を養えることが、この研究の大きな魅力だと言えるでしょう」
学生と間違われることもあるという中山講師。学生との距離を縮め、気軽に質問できる雰囲気づくりを大切にしているそうです。
「私自身、大学生の頃は先生に質問するのに緊張しました。けれども、数学は人と話すことで理解が深まることもあります。だからこそ、学生には気軽に話しかけてもらえる教員でありたいと思っているのです。数理科学専攻では、数学が好きな人を大歓迎。『なぜそうなるのか』を自分で考え、粘り強く問題に向き合う姿勢を大切にしてください。数学は決して簡単ではありませんが、一つひとつ理解できるようになると、その奥深さやおもしろさを実感できます。数学が好きな人も、もっと学んでみたい人も、ぜひ一緒に数学の楽しさを味わいましょう」

