大和大学 大志を、まとえ。

検索したいワードをいれて検索してください

またはサイトマップもご覧ください

VRを用いたリハビリの研究を通じて、
理学療法の常識を超えていく

梶原 良之教授


保健医療学部 理学療法学専攻
研究テーマ

VR(バーチャルリアリティ)を活用したリハビリの研究

梶原教授は、視覚情報による脳の錯覚に着目し、VR(バーチャルリアリティ)を用いたリハビリの研究を進めています。VR上での日常動作の疑似体験やアバターによる視覚刺激は、従来難しかった実生活に即したリハビリを可能にし、社会復帰の促進や生きがいにもつながる可能性があるのだとか。アバターが身体や感情に影響を及ぼすことも明らかになっており、今後の研究がリハビリの新たなスタイル創出につながることが期待されます。

究極の目標は、仮想空間での生活を通じて
生きがいを感じてもらうこと

近年、VR(バーチャルリアリティ)はリハビリの領域でも急速に普及しています。ケガなどで手や足を失った方のリハビリに長年携わってきた梶原教授は、こうした技術にいち早く着目した理学療法士の一人です。
「例えば、VR内の物体に手を伸ばし、掴んで移動させるといった一連の動作を繰り返すことで、腕や肩まわりのリハビリ効果が期待できます。また、VR空間に合わせて足運びや重心の移動を調整しやすいことから、歩行訓練への応用も広がっています

ただ、VRを用いたリハビリの研究を行う梶原教授によると、こうした活用法はVRが持つ可能性のほんの一端に過ぎないそうです。
「そこから一歩踏み込み、VRを活用して電車に乗る、階段を上る、エレベーターに乗る、買い物をするなど、日常生活のさまざまなシーンを疑似体験できる研究を進めています。そうすることで、従来は病院内では実施が難しかった実生活に即したリハビリが可能になります。その結果、患者さんの退院後の社会復帰をより早めることができると考えています。」

梶原教授にとって、VRを活用したリハビリの究極の目標は、アバターを用いた仮想空間での生活を通じて、より生きがいを感じてもらうことだそうです。
「現実世界で身体に不自由がある人でも、仮想空間で自分のアバターが自由に動き回る姿を見ることで、何の制約もない別世界を生きているような感覚を得られます。仮想空間で何不自由なく暮らす経験が、心に余裕や希望をもたらし、ひいては生きがいにつながる可能性があると考えているのです」

視覚による脳の錯覚を応用することで、
リハビリ効果が高まる

そもそも梶原教授がVRに注目した背景には、手足を切断した患者さんたちのリハビリに携わった経験がきっかけです。
「手を欠損された方のなかには、実際には存在しないはずの腕に痛みを感じる『幻肢痛』が生じることがあります。その痛みを和らげる方法の一つとして用いられるのが、ミラーエクササイズです。切断されていない手を鏡の前に置き、その手を動かすと、鏡に映った姿が失われた手のように見えます。この視覚情報によって、脳内で手が存在して動いているという錯覚が生じ、『幻肢痛』が緩和されることがあるのです」

この視覚による脳の錯覚を、リハビリに応用できないかと考えた梶原教授。患者さんの膝から下が欠損した足の前に義足を置き、その姿を鏡越しに見ることで、足が存在しているように感じられる状態をつくり出しました。そして、その光景を患者に目に焼き付けてもらったうえでリハビリを行ったところ、従来よりも効果が高まったそうです。
「一番驚いたのは、電車にひかれて片手と両足を失った患者さんのリハビリを担当したときです。三肢切断という極めて重篤な状態でしたが、脳の錯覚を応用したリハビリの効果により、なんと6週間で歩行を獲得するに至りました。

梶原先生の研究参考動画

この経験がきっかけで、梶原教授は脳にとって視覚情報がいかに重要であるかを再確認させられたといいます。
「そうこうしているうちに、VRという新しい技術が登場しました。視覚を使った脳の錯覚に着目していた私にとって、まさに理想的なツール。研究への興味は一気に加速しました。しかも、VRを使って視覚による脳の錯覚を応用したリハビリを実践している理学療法士はほとんどいないのが現状。この研究を通じて新たな知見が得られれば、将来的にリハビリの常識を大きく覆す可能性があると言えるでしょう」


リハビリの新たな常識を生み出し、
患者さんの生活の質向上に貢献したい

梶原教授の実体験から、視覚による脳の錯覚がリハビリに好影響を与えることが明らかになりました。また、海外の研究では、VR上のアバターを通じた視覚情報が、身体の感覚に影響を及ぼすことが報告されているそうです。
「ある研究では、筋肉質なアバターを用いた被験者が握力を測定したところ、通常よりも高い値を示す結果が得られました。また、別の研究者による事例では、自分のアバターが泣いている姿を見ることで、悲しみの感情が喚起されたという報告もあります。このように、アバターの姿や表情は、利用者の身体的パフォーマンスや感情に影響を与える可能性があると言えるでしょう」

しかし、こうした最新の研究成果は、依然として世間に受け入れられにくいのが現状。専門家の間でも「気のせいではないか」という意見が根強く残っているようです。
「残念なことに、学生たちも同じような反応でした。昨年のゼミで、VRで怖い映像を観る前後の筋緊張を比較したところ、映像を観た後に筋緊張が高まる傾向が見られました。これは、怖い映像の影響で筋肉が硬直していることを示しています。にもかかわらず、学生たちは半信半疑で、『たまたまでは?』といった表情を浮かべていました」

これまでの歴史が証明してきたように、世の中の常識を覆す研究や発見は当初は理解されず、受け入れられるまでに時間を要することが多いものです。VRを用いたリハビリの研究も同様で、その有効性が広く認知されるまでには、さらなる検証や実証が欠かせません。
「アバターや仮想空間が人の身体や感情に影響を与えるという事実は、リハビリの新たな可能性を拓くアプローチとなります。今後、研究が積み重なれば、多くの患者さんの生活の質向上に大きく貢献できるでしょう。また、学生たちはVRを用いたリハビリの研究に携わることで、プラスαのスキルを身につけることができます。理学療法士として第一歩を踏み出す際に、大きな強みになるはず。ぜひ皆さんには、VRの技術を積極的に活用し、リハビリの未来を変えていってもらいたいです」

プロフィール

梶原 良之教授

保健医療学部 理学療法学専攻

金沢大学医療技術短期大学部理学療法学科卒業後、防衛医科大学校病院に入職。防衛庁技官として勤務し、主任理学療法士として急性期医療に従事するとともに、部門運営および後進育成を担った。その後、大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程、人間総合科学大学大学院人間総合科学研究科博士課程を修了。リハビリテーション専門学校理学療法学科長を経て、2021年に大和大学に着任。現在に至る。

HOME > 研究・教育 > 研究探求 @ 大和大学 > VRを用いたリハビリの研究を通じて、理学療法の常識を超えていく 〜 梶原 良之 教授