最新の方法論や最先端技術を用いて、
経済や経営の課題解決に挑む
最新の方法論や最先端技術を用いて、
経済や経営の課題解決に挑む
大西匡光教授
ファイナンスや金融工学、
オペレーションズ・リサーチ
数理モデルやAI、データサイエンス、ICTといった最新の方法論や技術を活用し、経済や経営に関するさまざまな課題を解決する研究に携わっている大西教授。常に時代のニーズに合った複数のテーマを追いかけながら、精力的に活動しています。社会課題の解決や日本経済の活性化の一翼を担える研究なので、大きなやりがいを味わえるのが特徴。大西教授のもとで学ぶことで、金融リテラシーを高めることもできるでしょう。
金融市場の安定的な発展、
そして日本の経済や産業の活性化、成長に貢献
長年、ファイナンスや金融工学、オペレーションズ・リサーチについて研究を行ってきた大西教授。ファイナンスとは、資金調達をしたり、調達した資金を利用したりすることを指す言葉です。金融工学とは、金融に関するさまざまな課題を、数理モデルやデータ分析を通して研究する学問のこと。そして、オペレーションズ・リサーチとは、数学や統計を使って、時間やお金など限られた資源をもっとも効率的に使う方法を導き出すことを意味します。
「オペレーションズ・リサーチは、もともと軍事作戦研究として発達しました。それが民間に転用され、政府や自治体、企業が問題解決や意思決定を行う際に用いられるように。メーカーを例にあげると、製品の生産量や価格を決めるときにも活用されています。
大西教授のこれまでの研究テーマは、「リアル・オプションに関連した最適停止問題」「企業の配当政策や自社株買いの最適化に対するインパルス制御理論の応用」「市場の投資主体の持つ将来の不確実性に関する信念とそれに対する態度が資産の均衡価格に与える影響についての比較静学」「新しい金融リスク尺度に基づくポートフォリオ最適化」「ゲーム構造を持つ金利デリバティブの価格付け」などです。
「聞き慣れない専門用語が並んでいるので、どういった内容かを理解するのは難しいでしょう。大学生に説明しても、なかなか伝わらないのが現状。かみ砕いて言うと、経済や経営に関するさまざまな課題を、数理モデルやAI、データサイエンス、ICTといった最新の方法論や技術を用いて解決していく研究です」
大西教授によると、最新の方法論や技術を活用して経済や経営に関する課題解決を図っていくこと自体が、この研究のおもしろさだといいます。
「研究の目的は、国や自治体、企業、それぞれの家庭の資産形成や金融リスクマネジメントに少しでも貢献すること。そして、金融市場の安定的な発展、さらには日本の経済や産業の活性化や成長に、少しでも役に立てればと考えています」
ダイナミック・プライシングなど、
暮らしに身近なテーマも研究
現在、大西教授が研究を進めているテーマのひとつに、均衡取引執行問題があります。わかりやすく言えば、株や債券などの売買をどのようにタイミングよく実行するかといった問題です。
「例えば、年金は国内株式・債券、外国株式・債券によって運用されています。分散投資をしているとはいえ、年金のファンドの運用で株式や債券を売り買いすると巨額のお金が動くため、市場に大きな影響を与えかねません。市場に悪影響を与えることなくスムーズに売買できれば、国民から預かっている年金を効率よく増やせると思っています」
業績連動株式報酬制度の価値評価も、大西教授が取り組んでいる研究です。業績連動株式報酬制度は、企業が役員や社員に株式を取得できる権利を与える報酬制度のこと。働くうえでのモチベーションアップにつながるとてもいい制度なのですが、大西教授によると大きな問題が一点あるそうです。
「もちろん企業によって異なって当然ですが、業績連動の評価基準がブラックボックス化していること。評価の仕組みを可視化できれば、制度の適正化を図れると考えています」
さらに、大西教授は統計的機械学習を組み入れた、適応的ダイナミック・プライシングにも注目しています。ダイナミック・プライシングとは、需要と供給に応じて商品やサービスの価格を変動させる仕組みのこと。身近なところでは、ホテルの宿泊料や飛行機のチケットなどが、ダイナミック・プライシングによって決められています。
「機械学習を取り入れて、どのタイミングで価格をどう変動させるのがベストかを導いていく研究。学生にもとても身近なテーマなので、楽しみながら取り組めると思います」
株式投資は資産形成だけでなく、
企業の応援にもつながる
投資先進国で暮らすアメリカ人などと比べて、日本人は金融リテラシーが低いと言われています。日本にはお金について多くを語らないカルチャーが根づいており、投資について学ぶ機会もなかなかありません。大西教授は、こうした現状に危機感を抱いています。
「産業界でイノベーションを起こそうと思ったら、資金調達が必要不可欠です。金融の知識がなければ、いくらいいアイデアや技術を持っていても、ビジネスを軌道に乗せるのは難しいでしょう」
大西教授のもとで学ぶことで、金融リテラシーを高めることが可能。また、国をあげて「貯蓄から投資へ」とシフトするなか、自らの資産形成について役立つ知識を身につけることもできます。
「株式を購入して投資を行うことに対して、『ギャンブルと同じ』と思っている人もいるかもしれません。けれども、株式投資はその企業を応援することでもあるのです。自身の資産形成だけでなく、産業の活性化にもつながるということを広く伝えたいですね」
また、金融と数理モデルやAI、データサイエンス、ICTといった最新の方法論や技術の融合により、研究者にとってできることの可能性が大きく広がりました。
「新しい方法論を自分の力で見つけたり、最先端技術を駆使したりして、ぜひ社会課題の解決や日本経済の発展に、大きく貢献していきましょう」
大西匡光 教授
京都大学大学院工学研究科博士前期課程数理工学専攻修了。京都大学助手、東北大学助教授、大阪大学の教授・副理事・名誉教授などを歴任。2022年に大和大学政治経済学部の教授を経て、情報学部へ。日本オペレーションズ・リサーチ学会のフェローとしても活躍中。