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生成AIや物語生成システムを活用して、
クリエイティブ活動の可能性を広げる

小方 孝教授


情報学部 情報学科
研究テーマ

生成AIや物語生成システムを
駆使したクリエイティブ制作

今から30年以上も前から、生成AIや物語生成システムに関心を抱いていた小方教授。それら最先端技術をクリエイティブ活動に融合させるために実験小説を手がけるなど、さまざまなチャレンジを続けています。小方教授のもとで学ぶ学生たちも、生成AIを活用した小説づくりに挑戦中。誰もが生成AIや物語生成システムを使って、カジュアルにクリエイティブ活動ができる社会の実現を目指しています。

30年以上前は、AIによる文章作成や
物語の創造は馬鹿にされていた

近年、目覚ましい進化を遂げている生成AI。ジャンルやテーマ、キャラクターなどを設定すれば、AIが自動で小説を書いてくれる時代になりました。直近では、芥川賞を受賞した作家が、「受賞作の5%は生成AIの文章」と発言して大きな話題に。30年以上も前から、そんな物語生成の技術に注目していたのが小方教授です。
「正直、当時は周囲から馬鹿にされていました。『そんなのできっこない』という声もありましたが、それ以上に多かったのが『何の役に立つの?』という声です。『手紙の文章を自動で書いてくれる技術があれば楽じゃないですか?』と言っても、『手紙は人間が書くものでしょ』と返され、反論できませんでした」

生成AIを活用すれば、小説だけに限らず、絵や音楽、動画まで簡単につくれてしまいます。小方教授によると、その技術はここ数年で驚くほど進化を遂げているのだとか。
有名ジャズ・ピアニストの音楽と、それを真似て生成AIで作成した音楽を学生に聴かせたところ、『生成AIの音楽のほうが好き』という学生の意見が多く、とても驚きました

生成AIによるクリエイティブ制作には、まだまだ批判が多いのも事実。特に、第一線で活躍しているクリエイターたちからすれば、「受け入れられない」という声があがるのも当然です。
「ただ、生成AIを上手に活用することで、小説や絵、音楽、動画などのクリエイティブ活動の裾野を広げることができます。例えば、『いいアイデアがあるけど、文章が苦手で小説なんて書けない』という方にとって、生成AIは心強いツールになるでしょう。ビジネスとしてではなく、多くの方がクリエイティブ活動を趣味とし、手軽に楽しめればいいなと考えています」

ストーリーやプロットの作成と
キャラクター設定が人間の重要な役割

小方教授は、物語生成システムを活用した実験小説を、メディアプラットフォーム「note」に発表しています。長年、物語生成の技術を追い続けてきたなかで、この5年ほどの間にAIが作成する文章スキルは格段にあがったそう。では、生成AIを使って小説を執筆するうえで、どういった点に注意する必要があるのでしょうか。
小説の文章自体は、生成AIが上手につくってくれます。ですから、人間がやるべき重要なことは、ストーリーやプロットの作成とキャラクター設定。物語を手がけるうえで、そこがもっとも大切だと言えるでしょう。もちろん、生成AIが提示した文章を参考にして、様々な「言葉の冒険」を試みる余地もあります。」

文章生成のスキルは高まったとはいえ、まだまだ小説としてのクオリティには満足していないという小方教授。プロンプト(生成AIに対する命令や指令)を何度も精査し、AIの反応を確認しながら、実験小説のブラッシュアップを続けています。
「AIのすごいところは、人間では思いつかないような突拍子もない物語を生み出すところ。それを、『こんなのはあり得ない』と突っぱねるのではなく、微調整を加えながらクオリティを高める努力を続けています。自分が理想とする小説を最短距離で作成できるプロンプトを見つけることは難しいのが現状。でもだからこそ、おもしろい試みだと感じています」

小方教授は、演習の一環として学生たちにも生成AIを活用した小説づくりにチャレンジしてもらっているそうです。作品発表が楽しみで仕方ないとか。
「生成AIを駆使して、クリエイティブな活動に取り組めるのが魅力。小説家志望の学生でなくても、楽しみながら最先端技術を学ぶことができるでしょう。しかも、生成AIを使えば絵や写真から物語をつくり出すこともできる。いろいろ試せるので、好奇心を強く刺激されるはずです」

生成AIとのコラボレーションで、
自分の作品を世に送り出したい

生成AIや物語生成システムを利用した物語コンテンツの制作についての研究を中心に、歌舞伎をはじめとする日本の伝統芸能の物語技術や情報構造の調査・分析と応用システム化や、ロシア・ウクライナ戦争などを題材としたコグニティブセキュリティー(認知安全保障)の研究、ASD(自閉スペクトラム障害)への物語論的アプローチなど、幅広い研究を手がけている小方教授。一見、まったく関連性がなさそうですが、実はそれらはつながっているそうです。
「私の研究に共通しているキーワードは、“ナラトロジー”。和訳すると“物語論”で、物語や語りの技術や構造について研究する学問を指します」

小方教授によると、歌舞伎は既存の作品に新たな要素をプラスし、時代に合わせて進化し続けてきたのだとか。
「歌舞伎に限らず、日本の伝統芸能の多くは、既存のものに何かを組み合わせて新たな価値を生み出す技術に長けています。イノベーションは異なる分野の掛け合わせによって生まれると言われるように、伝統芸能も同じ。そして、既存のものに何かを組み合わせるというのは生成AIが得意とするところです。歌舞伎と生成AIのコラボレーションによって、今後新たな可能性が広がっていくかもしれません」

学生時代に物書きになりたくて挫折した経験がある小方教授にとって、研究の最終的なゴールは生成AIを活用して自分で物語をつくること。誰もが手軽にクリエイティブ作品を手がけられる時代を迎え、少年時代の夢が蘇ってきたのだといいます。
「あくまで趣味としてですが、死ぬまでに自分の作品と呼べるものを世に送り出したいですね。また、誰もが生成AIを活用して気軽に創作活動を行い、自分を表現できる世の中になればうれしいです

プロフィール

小方 孝 教授

情報学部 情報学科

早稲田大学社会科学部社会科学科卒業後、AIに関する仕事に携わる。退社後、東京大学の大学院などで学び、 東京大学先端科学技術研究センターの研究員に。1997年からは山梨大学・大学院助教授、岩手県立大学教授として活躍し、現在は大和大学の教授として学生の指導を担当する。岩手県立大学名誉教授。

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