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社会を劇的に変える量子インターネットの
実現に向けた、最大の課題解決に挑む

尾身博雄教授


理工学部 電気電子情報工学専攻
研究テーマ

量子インターネット通信の
実現に必要な中継技術の研究

従来のネットワーク通信と違い、究極のセキュリティ効果が期待できる量子インターネット通信。次世代の通信技術の実現に向けて最大の課題となっている中継器を開発するために欠かせない、量子ビットに適した物質を見つける研究に携わっているのが尾身教授です。次世代のインターネット通信技術のスタンダードを創り出す、世界最先端の研究。「NTT物性科学基礎研究所」との共同研究にも携わっています。

インターネット通信の、
“未来の当たり前”を生み出す

量子力学の原理を利用して、大量かつ高速な計算を可能にする量子コンピュータ。現在のコンピュータと比べて、一度に処理できる情報量が飛躍的に増えるため、さまざまな業界での活用が期待されています。既存のコンピュータの情報単位はビットで、「0」か「1」のいずれかを表すことしかできません。しかし、量子ビットは「0」と「1」の両方を表せるため、大量の情報を高速で計算できるのが特徴です。
「量子コンピュータのパフォーマンスを最大化させるために必要となるのが、量子インターネットです。従来のインターネットと異なり、より大量かつ高速に情報を処理できる、次世代のネットワークとして期待されています」

そう語ってくれた尾身教授は、量子インターネット通信の実現に向けた、最先端の研究に携わっています。
「世界中で量子インターネットの研究が進められていますが、まだ基礎研究の段階。技術が確立されるのは、10~20年先と言われています。最大の課題は、通信経路に必要な中継器。量子情報の伝達には光通信を使うのですが、現在の技術では遠くまで届けることができません。中継器を使って量子情報を保存、再生することで、世界中とネットワークでつながれるようになるのです」

中継器を開発するうえで欠かせないのが、量子状態を長時間保持できる量子メモリに使われる、高速で安定性の高い量子ビット。尾身教授は通信波長帯の光と強く相互作用するエルビウムという元素に注目し、量子ビットとして利用するための研究を行っています。
「私はエルビウムに着目しましたが、世界中ではさまざまな材料、技術で量子情報を保とうという研究がなされています。例えば、ダイヤモンドを用いて研究を進めているところもありますし、途中で光の波長を変換するというアイデアを用いて研究を進めているところもあります」

量子インターネット通信が実現すれば、
社会が劇的に変わる

量子インターネットによる長距離通信を可能にする中継器が完成すれば、世界中に大きなインパクトを与えます。現在、各国の研究者たちが、こぞって中継器の研究を進めているところ。では、中継器が開発されて量子インターネットの技術が実用化されれば、世の中はどうなるのでしょう。
絶対に盗聴されない、究極のセキュリティを有した情報通信ネットワークを、世界中のどこででも構築できるようになります。今後、量子コンピュータで計算される国家機密情報や医療情報、金融情報などの安全性を、極限まで高めることができるでしょう」

また、量子コンピュータを活用すれば、現在のインターネット通信で一般的に使われている暗号システムが瞬時に解読される危険性があります。つまり、量子コンピュータの普及にともない、量子インターネットが必要不可欠になるのです。
「セキュリティ面で世界をリードしているのが中国です。2021年1月、中国科学技術大学のグループが科学誌『Nature』に論文を発表しました。それによると、中国は国内に4600kmに及ぶ暗号ネットワークを構築し、機密情報の送受信に利用しているということです。この論文は、世界中に大きな衝撃を与えました

世界中でつながり、大量のデータをスピーディに計算できる量子インターネット通信のメリットは、セキュリティ以外にも及びます。
「あくまでほんの一例に過ぎませんが、新薬の開発スピードは格段に上がるでしょう。天気予報の精度も、さらに高まるはず。ほかにも業界を問わず、あらゆる分野の発展を大幅に加速させていくでしょう。量子インターネット通信は、世の中をガラリと変える可能性を秘めているのです

世界最先端の技術に触れ、
企業での実践的な研究にも携われる環境

尾身教授の研究室では、量子インターネット通信に関する世界最先端の技術に触れることができます。
「近い未来、量子インターネット通信の時代が必ず訪れます。そのカギを握るのは、安定した量子ビットの実現。しかし、量子ビットは内外からの物理的な干渉に非常に脆弱です。無数の物質のなかから、通信波長帯の光と相互作用する堅牢な量子ビットを見つけ出すことが、私の研究室のミッションだと言えるでしょう。この研究を進めるためには、電磁気学、量子力学、回折結晶学といった基礎学問が必要不可欠。基礎学習を深めながら科学的な思考力を身につけられるため、いくらでも応用が可能になります」

また、「NTT物性科学基礎研究所」との共同研究も行っている尾身教授。現在は、希土類元素の微弱光検出のためのプローブトンネル電子顕微鏡の共同開発を進めているそうです。
「わかりやすく言えば、光ファイバーに光を送り込んで、特定の原子に光を当てることができるようにする装置。この装置開発に関わることで、学生たちは電子・光物性の高精度な測定方法について学ぶことができます」

大学の枠を超えて、「NTT物性科学基礎研究所」の世界最先端の技術に触れられるのが大きな魅力。量子インターネット通信に関する学びを深めていくうえで、これほど理想的な環境はないでしょう。
「長期間にわたる『NTT物性科学基礎研究所』との共同研究を通して、インターンシップでは得がたい経験ができるのがポイント。『来年、卒業研究を研究所でやらせてほしい』と志願してきた学生もいました。通常なら学生レベルではできないことにチャレンジできることが、私の研究室の強みであると自負しています」

プロフィール

尾身博雄 教授

理工学部 電気電子工学専攻

1993年早稲田大学助手嘱任、1995年早稲田大学学位(博士)取得。1999年に、日本を代表する大手通信会社の研究所に入社。量子光物性研究部の主任研究員などを経て、2020年に大和大学へ。理工学部の教授として、世界最先端の研究に携わりながら学生指導にあたる。

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