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東アジアの歴史を振り返り、
建築や都市の未来を探る

包 慕萍 BAO MU PING 教授


理工学部 建築学専攻
研究テーマ

東アジアの建築史・都市史から学ぶ、
未来の建築、町づくり

「建築や都市空間がどのように成立したのかを明らかにする」というテーマを掲げ、フィールドワークを通して東アジアの建築史・都市史の研究に携わる包教授。現在は、東アジア近代住宅地の形成史をテーマとした研究に注力しています。グローバルな視点で建築の歴史を振り返ることで、建築や都市の未来を創るヒントが得られるでしょう。

東アジア全域の
建築史・都市史を研究

大学院時代から建築史・都市史を研究対象とし、これまでに20ヵ国80以上の都市でフィールドワークを行ってきた包教授。建物を観察したり、住民にインタビューをしたり、現地の郷土料理を食べたり、日常生活を覗いてみたりしています。それらすべては、その地域の生活や社会を理解する研究活動の一環。まるで、探検でもしているかのような楽しさを味わえるといいます。
「私の研究テーマは、建築や都市空間がどのように成立したのかを明らかにすること。例えば博士研究では、遊牧文明であったモンゴル高原の都市が、ゲルに代表される“移動的する都市・建築の造営システム”からどのように近代化したのかを調査しました」。

包教授の研究のフィールドは、ユーラシア大陸。常に世界を視野に入れたアプローチを行っており、日々の研究活動は国際的な学者とのネットワークを活かしながら行われています。
「『日本建築史』『中国建築史』といった国の枠組みのなかではなく、国境をまたいでの人々の移動、思想や技術の伝播を対象にしているのも特徴です。建築文化や技術の伝播をたどることでユーラシア都市建築史をまとめるという夢の実現に向け、日本と中国の建築史家による『東アジア前近代都市・建築史円卓会議』 を企画・運営。東アジアという地域を単位として、都市と建築の通史を読み解くためにチャレンジを続けています」。

現在は、東アジア近代住宅地の形成史をテーマとした研究を進めている包教授。具体的には、100年前に旧満洲で建設された日本人のための田園住宅地と、同時期に日本に誕生した東京の田園調布の町や大阪の池田室町住宅地に着目しています。
「イギリスの都市計画家・ハワードの“田園都市思想”の影響を受けて満洲に渡った建築家と、日本に残った建築家の違いを明らかにしたい。また、高温多湿の日本から寒冷地帯の満洲へ渡った日本人の住宅は、何がそのままで何が変わったのかを明らかにし、その当時の日本人の住宅の理想像を解明したいと考えています」。

歴史や世界に目を向けることで、
常識や固定観念を超えていく

今だけでなく過去、そして日本だけでなく世界を知ることは、将来“建築のプロ”として活躍するうえで大きな武器になるはず。包教授によると、「常識や固定観念に縛られずに、フレキシブルな発想で建築を捉えることができるようになる」そうです。
「例えば、日本の建築文化の象徴のひとつとも言える『障子』は、海外から見たらおどろくばかりです。けれども、日本人は紙を建築材料として上手に取り入れ、独自の建築文化を育んできました。世界に目を向ければ、そういった常識を覆す発想やアイデアにいくらでも出会えるのです」。

包教授が指導している2年生の学生たちは、建築の常識ではあり得ない発想力を活かし、『第16回 長谷工住まいのデザインコンペティション』で佳作を受賞。多くの大学院生の応募者がひしめく激戦のコンペで、快挙を成し遂げました。
「コンペのテーマは『循環する集合住宅』。そんななか、学生たちは雨水を循環させるシステムを構築し、雨水を汲み、生活用水とするサスティナブルな集合住宅を提案しました。不便さや水たまりのハエや蚊の発生などの衛生的な問題から、通常はこうした発想は生まれません」。

学生たちが受賞作「水たまりで息をする」を完成させるうえで、ヒントにしたのが包教授のフィールドワークの経験でした。
「かつて、フィールドワークでタイの水上の集落や、中国の雲南省にある水路の町を訪れた際に、人と水が共生する生活環境を目の当たりにしました。学生たちは、自分たちの大胆な発想に、私がフィールドワークで得た現地の生活の知恵を組み合わせて、水と共に生きるをテーマに常識を超えた集合住宅を完成させたのです」。

大学卒業後に、
即戦力として活躍できる人材を育成

包教授のゼミでは、建築史・都市史の知識やデザイン力だけでなく、フィールドワークの方法やインタビューのノウハウを学べるのが特徴。また、建築学専攻の学生は1学年50人と、少人数で建築見学やフィールドワークを実施することができます。
「今年もゼミ生たちと、滋賀県にある大自然を生かした建築美が特徴の『MIHO MUSEUM』を訪れたほか、京都駅から三十三間堂や清水寺、京都博物館を巡る町歩きを実施しました」。

包教授は、毎月1回ほどのペースで業界の最前線で活躍するプロを招いた講演会などを実施。大手ゼネコンの設計本部で活躍するコンセプトデザイナーや、フランスのストラスブール建築大学の先生などから、学生たちは多くの刺激を得ています。
「大学の枠を超えて、学生たちには多くの出会いの場を提供したいと考えています。そうすることで、モチベーションアップにつながると同時に、自分の可能性を大きく広げていけるでしょう」。



建築史・都市史を学ぶことで建築や都市の歴史を振り返り、フィールドワークを通して現地の文化や生活に触れ、コンペへの参加を通して学んだことをアウトプットし、第一線で活躍するプロたちと接することでモチベーションを高められる環境。包教授と過ごす濃密な時間は、学生たちにとって将来の大きな糧となるはずです。
「私が目指しているのは、職場での仕事や大学院での研究において、即戦力として活躍できる学生を育成すること。そして、歴史から多くのことを吸収し、それを活かして建築や都市の未来を担える人材へと成長していってもらいたいと考えています」。

プロフィール

包 慕萍 (BAO MU PING) 教授

理工学部 建築学専攻

上海・同済大学建築都市計画学院修士修了。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、博士(工学)。博士論文で『アジア・太平洋研究賞(井植記念賞)』を受賞。現在大和大学教授、東京大学生産技術研究所リサーチフェロー。都市史学会企画委員会委員。共著『歴史遺産 近代建築のアジア』、『アジアからみる日本都市史』、単著『モンゴルにおける都市建築史研究』など著作多数。

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