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電気刺激療法を活用した、
新たなリハビリ法の確立に挑戦

外山 慶一教授


保健医療学部 総合リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻
研究テーマ

摂食嚥下障害に対する
電気刺激療法の研究

飲み込む際の筋力の衰えなどからくる摂食嚥下障害のリハビリに、電気刺激療法を活用する研究に取り組んでいる外山教授。のどに電極を装着し、電気刺激で周辺の筋肉を鍛えることで、飲み込みやすさの改善を目指しています。なかでも、外山教授はまだ世界でほとんど例がない、甲状舌骨筋をピンポイントで刺激する電気刺激療法に注目。新たなリハビリ法の確立と、言語聴覚士の可能性を広げるために奮闘しています。

従来の方法に限界を感じ、
電気刺激療法の研究に着手!

言語聴覚士として長年、食べ物をうまく飲み込めない方へのリハビリを行ってきた外山教授。病院で働いていた頃から、摂食嚥下障害に対する電気刺激療法の研究を行っていました。
摂食嚥下障害とは、脳血管障害や神経疾患などの病気や高齢によって生じる障害のこと。食べ物をうまく飲み込めなくなり、むせてしまう、食べ物が口のなかやのどに残るなど、さまざまな症状があります」

食物をうまく飲み込めなくなる直接的な原因は、飲み込む際の筋力の衰えやのどの感覚の低下などさまざま。その治療法のひとつとして、電気刺激療法を用いることがあるそうです。
電気刺激療法は、のど周辺の筋力が低下し、食べ物を飲み下すことが難しい方に対して行われます。のどに電極を取り付け、電気刺激を与えることで筋肉を鍛え、飲み込みやすさの改善を目指すというもの。私は、この摂食嚥下障害に対する電気刺激療法をテーマに、長年研究を進めています」

外山教授が電気刺激療法に着目したのは、多くの患者さんのリハビリに携わるうちに、既存の方法では限界があると感じたため。海外の文献を調べたり、ドクターや作業療法士に意見を求めたりするなかで、電気刺激療法に可能性を見出しました。
「世界的には、摂食嚥下障害に対する電気刺激療法の有効性がエビデンスとして示されており、リハビリの最前線でも活用されています。一般的には、低周波や中周波が用いられていますが、私が興味を覚えたのは『HVPC(High-Voltage Pulsed Current)』。短いパルス状の高電圧電流を用いた電気刺激の一種で、この電流と刺激端子を工夫して使用することで、『ごっくん』と飲み込む際に重要な役割を果たす甲状舌骨筋にも、効果的に電気刺激を与えることが可能になります

電気刺激療法には、
患者さんの回復を早める効果が期待できる!

「HVPC」を使い、甲状舌骨筋をピンポイントで刺激する電気刺激療法は、世界的にも極めて珍しいとされています。そんななか、外山教授は試行錯誤を重ねながらも、電気刺激治療法の新たな可能性に挑み続けています。
甲状舌骨筋に対する電気刺激療法が研究対象になりにくい理由のひとつに、安全性の問題があります。誤って別の筋肉に刺激が加わると、患者さんの身体に悪影響を及ぼしかねません。また、甲状舌骨筋の近くには頸動脈が走っているため、注意が必要。さらに、高電圧の電流は取り扱いが難しく、確かな知識と高度なスキルが求められることが大きな壁となっています」

国内において、摂食嚥下障害に対する電気刺激療法と言えば、必ずと言ってよいほど名前があがる外山教授。甲状舌骨筋への電気刺激治療法という、多くの言語聴覚士が踏み込まないテーマにこだわり続けている理由は何でしょうか。
「電気刺激療法を活用し、一人でも多くの方が食事を楽しめるようサポートしたいからです。特に、好きなものを食べられるようになれば、患者さんのQOL(生活の質)が向上し、笑顔も増えるでしょう。摂食嚥下障害が改善され、患者さんが食事を楽しんでいる姿を目にしたときには、こちらも幸せな気持ちになります」

しかも、電気刺激療法にはリハビリのスピードを格段に向上させ、患者さんの回復を早める効果が期待できるといいます。
「例えば、入院期間内での改善が難しい患者さんでも、通常のリハビリに電気刺激療法を併用することで、より短期間で嚥下機能を改善できる可能性が高まります。患者さんの負担軽減につながるだけでなく、リハビリの効果が実感できることでモチベーションの維持にもつながるでしょう。また、電気刺激療法は非常に奥が深く、刺激条件や方法、併用する訓練によって効果が大きく変わります。まだまだ有効な方法があるはずなので、それをさらに追求していきたいです」

グループ学習によって、
言語聴覚士の資格試験合格率90%以上を実現!

摂食嚥下障害に対して電気刺激療法が有効とはいえ、言語聴覚士を目指す学生が通う大学や専門学校では、あまり詳しく取り上げられることはありません。そのため、臨床でじゅうぶんに活用できる人材が少ないのが現状です。
大和大学では、電気刺激療法について学ぶことができ、ワンランク上のスキルを身につけることができます。また、言語聴覚士を目指す学生は、理学療法士や作業療法士を目指す学生と比べて、解剖学や運動生理学が苦手なことが多いですが、電気刺激療法を学ぶことで、これらの分野への理解も深まるでしょう」

私たちが普段、何気なく話したり食べたりする運動メカニズムは、非常に巧妙で繊細です。食事をしながら話すことができるのも、あごの下あたりの舌骨上筋群の筋繊維が関わっており、身体の解剖学的な観点から見ると、非常にユニークな特徴なのだとか。しかも、まだ解明されていない筋の運動も多いそうです。
理学療法士や作業療法士に比べて、言語聴覚士は地味に思えるかもしれませんが、運動メカニズムの解明や新たな治療法の開発など、やりがいの大きな仕事に挑戦できるチャンスが多くあります。ぜひ、若者ならではの柔軟な思考で、新たな可能性に挑戦してほしいですね」

大和大学では、言語聴覚士の資格試験において、90%以上の合格率を誇っています。「個の力だけでなく、全員で協力して力を伸ばしていく」ことを目標に、グループ学習を推進。一方的な講義にとどまらず、学生たちが主体となって教え合ったり、問題を出し合ったりすることで学習効果が高まる、と外山教授は感じているのだとか。
グループ学習を通してコミュニケーションスキルを高め、チームワークの大切さを学べるのも大きな魅力です。医療はチームアプローチが基本なので、グループ学習の経験は社会人になってからも役立つでしょう。言語聴覚士はあまり知名度が高くありませんが、理学療法士や作業療法士と共にリハビリを進める重要な職業です。さらに、聴覚や高次脳機能、音声など多岐にわたる専門分野があり、奥が深い仕事。グループ学習を通じて資格を取得し、現場に出て言語聴覚士の素晴らしさを実感してほしいと考えています。


プロフィール

外山 慶一 教授

保健医療学部 総合リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻

大学卒業後、専門学校に通って言語聴覚士の資格を取得。その後、宮崎の病院に就職し、現場の第一線で患者さんのリハビリにあたる。鹿児島の大学病院時代に、電気刺激療法の研究をスタート。言語聴覚士の可能性に惹かれ、それを多くの学生に伝えたいと思ってこの道へ。

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