

童謡や唱歌を後世へ継承すると同時に、
未来の音楽教育者を育成
童謡や唱歌を後世へ継承すると同時に、
未来の音楽教育者を育成
川内 奈保子教授
童謡や唱歌の演奏と演奏法、
初心者学生へのピアノ指導について
ソプラノ歌手として活躍する一方で、川内教授は童謡や唱歌の演奏とその演奏法(歌唱・ピアノ・弾き歌い)の研究や、音楽専攻ではないピアノ初心者学生への指導に関する研究を行っています。その目的は、美しい童謡や唱歌を未来へ継承しながら、音楽に親しむ人々を増やすこと。同時に、ピアノ初心者の苦手意識を克服する支援を通じて、未来の音楽教育を担う後進の育成に力を注いでいます。

情緒あふれる美しい歌を
次世代に継承していきたい
「第2回チェコ音楽コンクール」第3位入賞、「第5回フランス音楽コンクール」奨励賞受賞、「第2回ドイツ音楽コンクール」審査員賞受賞など、多くの受賞実績を持つソプラノ歌手の川内教授。帝国ホテルオペラシアターで、スザンナ役として『フィガロの結婚』に、アデーレ役として『こうもり』に出演するなど、オペラ界でも豊富な実績を誇っています。
「ソプラノ歌手としての活動を続けながら、現在は主に童謡や唱歌の演奏と演奏法(歌唱・ピアノ・弾き歌い)について研究を行っています」
研究の目的は、年代を超えて歌い継がれる古き良き時代の四季折々の情景を表現した、情緒豊かな美しい歌を未来へと継承していくこと。そのために、川内教授は教育の枠を超えて精力的に活動を行っています。
「2023年には、自主制作で小学校の歌唱共通教材全24曲のCDを手がけました。第2作目から第5作目として、『春の童謡・唱歌』『夏の童謡・唱歌』『秋の童謡・唱歌』『冬の童謡・唱歌』もリリースする予定。また、『童謡&唱歌 歌日記 川内奈保子』という動画チャンネルを運営し、日本の童謡や唱歌のピアノの弾き語り動画なども配信しています」

ヘンゼルとグレーテルあらかわバイロイト_クリスチャンハンマー指揮

ドン・ジョヴァンニ

川内教授が現在関心を持っているのは、明治時代から大正時代にかけて活躍した作曲家であり、音楽教育者でもある本居長世です。民謡や唱歌の作曲・普及に尽力し、日本の音楽文化に大きな影響を与えた人物。代表作には、『青い眼の人形』『赤い靴』『十五夜お月さん』などがあります。
「本居長世の曲は、声楽を専門としない人でも覚えやすく、比較的歌いやすいのが特徴です。また、彼の曲は童謡のジャンルに位置づけられますが、物語性や情緒あふれるメロディライン、ドラマティックな場面転換は、モーツァルトなどに代表される歌曲形式の“ドイツリート”にも通じるところがあり、とても魅力的です」


読譜と運指に苦労する、
ピアノ初心者の苦手意識を払拭させたい
童謡や唱歌の演奏および演奏法の研究に加え、川内教授は音楽専攻でないピアノ初心者の学生への指導に関する研究も行っています。指導する学生の約8割は、ピアノに触れたことがないビギナーたち。彼らに調査を行ったところ、「音符を読むのが難しい」「指番号通りに弾くのが難しい」といった声が多く、読譜と運指に苦労していることがわかったそうです。
「全15回の講義では、まず座学で基礎知識を教え、3回目からは実践を通じて反復練習を重ねてもらいます。読譜に対する苦手意識を克服するため、最初のうちは音符にフリガナを振ることを許可。また、効率的に演奏するためには指番号を守る必要があることを、丁寧に伝えています」
ピアノ初心者の苦手意識を克服できるような指導に力を入れることで、年々学生たちの上達が見られると感じている川内教授。まったくの未経験者でも、全15回の講義を通じて最低2曲は弾けるようになるそうです。
「なかには、10曲以上弾けるようになった学生もいました。今後も、学生たちがさらに高いレベルのピアノ技術を身につけられるよう、研究と指導を続けていきます」


そのほか、川内教授は吹奏楽部と合唱部の指導も行っています。吹奏楽部は、2023年12月に開催された「管打楽器アンサンブルコンテスト」で金賞を、2024年8月に開催された「大阪府吹奏楽コンクール」で銀賞を受賞。初心者が大半を占める創部2年目の合唱部も、2024年11月には記念すべき第1回定期演奏会を開催するなど、着実に成長を遂げています。
「部活動の指導で心がけているのは、学生たちの主体性を尊重すること。物事を決める際は学生だけで話を進めてから報告してもらい、フィードバックするようにしています。“やらされ感”がないので、学生たちは高いモチベーションで活動に打ち込むことができるでしょう」


私にとって、
音楽とは生きることそのもの
川内教授の指導のもと、学生たちは教養として身につけるべき音楽的知識や、ピアノ・歌唱といった基礎的な音楽技術、さらには幼児期の音楽教育のより効率的な指導法を学んでいます。
「学生には、幼児や児童への指導を通じて“音楽嫌い”を生まないようにし、音楽を愛する人を増やせる先生を目指してもらいたいです」
大和大学には、恵まれた音楽設備が整っています。例えば、ピアノは30台以上あり、しかも一人ひとりが防音対策の施された個室で練習できる環境。学校見学に訪れた吹奏楽の名門校の学生も、環境のよさに驚くそうです。
「学生一人ひとりにしっかりと個人練習を促すことができる環境は、大和大学の大きな魅力です。学生たちは効率的に練習でき、スピーディにスキルを高めていけるでしょう」


オペラ歌手としての活動やCD制作、動画サイトの運営といった個人の活動、大学での授業、部活動の指導などを通じて、音楽の魅力を多くの人々に広めている川内教授。多方面で精力的に活躍するための原動力は、どこにあるのでしょうか。
「私が目指しているのは、演奏活動を通じて音楽を愛する人々を増やすことです。また、自身の音楽教育へのエネルギーを最大限に活かし、未来の音楽教育者を育成することもミッションのひとつ。こうした想いこそが、モチベーションの源となっているのでしょう。私にとって、音楽とは生きることそのものなのです」



川内 奈保子 教授
京都市立芸術大学大学院修士課程修了後、ニューイングランド音楽院付属オペラストゥディオに1年間在籍。同大学院修士課程を「優等」の評価で修了する。帰国後、音楽家として多数のコンクールで受賞。現在はソプラノ歌手として活躍しつつ、大和大学で学生指導にあたる。