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振動によるタンク内の液体の揺れを研究し、
人工衛星やロケットの設計に役立てる

千葉正克教授


理工学部 機械システム工学専攻
研究テーマ

薄膜でカバーされた液体を有する球形タンクの動的連成挙動を、実験と理論解析の両面から追究

40年近くにわたって、航空宇宙構造工学について研究を続けてきた千葉教授。宇宙機の燃料タンクを模擬した球形タンクに水を入れ、液面を薄膜でカバーし、振動を加え、その際に生じる膜面の様子について、実験と理論解析の両面から研究を行っています。振動による液面(膜面)の揺れは、航空宇宙構造の性能を大きく左右する要因のひとつ。人工衛星やロケットの設計に活かすることができる、ダイナミックな研究に携われるのが特徴です。

燃料タンク内の液体の揺れが、
人工衛星やロケットの運動に影響を及ぼす

実験と理論解析の両面から、航空宇宙構造物の振動や構造の動的安定性に関連した研究を行っている千葉教授。なかでも、球形タンク内に入っている液体の動的応答の解明に力を注いでいます。
「具体的には、人工衛星の燃料タンクとして用いられている容器が上下左右に加振されたときに、中に入っている液体がどういった動きをするのか、その動きが容器にどのような影響を及ぼすのかを研究しています。実験には、JAXAから譲り受けたアクリル製の球形タンクを使用。また、今行っている実験では、液体を半分の量入れ、液面はシリコン膜でカバーされています」

簡単に言うと、水を張ったボウルを上下、左右に揺らすようなイメージ。加える力の大きさを変えながら、揺れによって発生する膜面の様子などを調べているそうです。同時に、外部から音響スピーカーで音響加振し、液体を入れた薄肉弾性壁面タンク内の液体の動きを調べる研究も行っています。
「内部に液体を有するタンクが鉛直方向に加振を受けると、“パラメトリック不安定振動”が発生します。その際、外部から音響スピーカーで音響加振すると、不安定振動が発生しやすくなるのかどうかを調べるというものです」

液体が入ったタンクに振動を加えたときの挙動や、音を加えたときの振動を調べるといった、一見不思議な研究を手がけている千葉教授。いったい、航空宇宙構造のどんなところに活かされる研究なのでしょう。
「人工衛星やロケットを打ち上げる際は、大きな振動や音が発生します。その影響で燃料タンク内の液体が揺れると、打ち上げロケットの軌道に悪影響を及ぼすリスクがあるのです。 また、宇宙空間にある人工衛星が軌道変更したり、姿勢変更した際、燃料タンク内の液体燃料が揺れると大きな問題になります。実験と理論解析の両面から、液体と燃料タンクの動的連成挙動を明らかにすることで、人工衛星やロケットの設計に役立つ貴重な資料となると考えています」

実験を進めていくなかで、
これまで知られていない現象を
発見できたときがおもしろい

そもそも千葉教授がこの世界に興味を持ったきっかけは、少年時代でした。自宅の近くに航空自衛隊の松島基地があったことから、航空機に興味を抱いたそうです。
「最初の頃は、パイロットになりたいと思っていました。ところが、高校に入り視力が落ちてきて断念。航空機を作ったり、整備したりする仕事に就きたいと思うようになり、大学や大学院では航空宇宙工学について学んでいました。その過程で、今行っているような振動の研究と出会い、この道を極めることになったのです」

千葉教授によると、この研究のおもしろさは、実験を進めていくなかで、これまで知られていなかった現象を発見できたときだとか。また、実験と理論解析の結果がぴったり一致したときに、大きな達成感を得ることができるといいます。
「大学院生のときに、これまで一般的に知られていたことと異なる現象を、世界で初めて実験によって明らかにしたことがあります。『液体を満たした円筒タンクの水平方向加振による動的安定性に関する研究』だったのですが、新しい現象を発見することができ、とても充実した学生生活でした」

学生時代から40年近くにわたって、航空宇宙構造工学について研究を続けてきた千葉教授。これほど長く続けられるモチベーションの源は何なのでしょうか。
「子どもの頃から航空宇宙の分野に興味があった私としては、『自分の研究結果が、人工衛星やロケットの設計に活かされるかも』と思うだけでワクワクします。研究成果を論文にまとめ、航空宇宙分野の未来に少しでも貢献したい、という思いこそが原動力だと言えるでしょう」

「3次元加振台」というハイスペックの
実験設備を活用して実験に挑む

千葉教授の研究室の特徴は、実際に手を動かして実験を行えること。実験環境を整えるのが難しいなどの理由で、コンピュータを用いたシミュレーションで済ませる研究室も少なくないなか、リアルに実験を行えるのが大きな魅力です。
実験を通して、物理現象を自分の目で確かめることができるのが重要。シミュレーションと違って、学生たちは多くの刺激を得ることができ、実験の楽しさを体感できると思います」

しかも、大和大学の理工学部は実験設備が充実。実験室には、「3次元加振台」という高価な実験装置も導入されています。試験体を3軸方向に加振することができ、千葉教授の研究の強い味方となるもの。今後、実験で積極的に活用していくそうです。
かつて勤めていた岩手大学にも『3次元加振機』がありましたが、本大学のものは大きくて驚きました。これほどの設備が整っている大学は、そうそうないと思います。『3次元加振台』を活用し、実験の幅を広げていきたいですね」

複数の大学で、長年にわたって多くの学生を見てきた千葉教授。大きく成長を遂げる学生には、共通点があるといいます。
「それは、自分の頭で考えて、主体的に行動できる学生。受け身ではなく、自ら積極的にアクションを起こせるタイプの方は吸収が早く、どこにいっても通用する人材へと成長できるはずです。大和大学には航空宇宙構造工学について深く学べる環境が整っているので、少しでも興味がある方は私と一緒に新しいことに積極的に挑戦しましょう

プロフィール

千葉 正克 教授

理工学部 機械システム工学専攻

1985年、東北大学大学院工学研究科機械工学専攻博士後期課程を修了後、岩手大学工学部の助手に。その後、講師、助教授、教授とキャリアを重ね、2005年からは大阪府立大学工学研究科 航空宇宙工学分野の教授として活躍。2023年、大和大学理工学部理工学科機械工学専攻の教授に就任する。

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