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戦後沖縄史をリアルにあぶり出し、
戦争のない平和な世界を目指す

村岡敬明准教授


情報学部 情報学科
研究テーマ

戦後沖縄史から学べることを、
政治や公共政策に還元

戦後沖縄史に注目し、主に「日米の沖縄政策が沖縄県民の政治意識に及ぼす影響」「本土復帰後の沖縄県の公共政策」について研究を行っている村岡准教授。一次資料の調査を通して新事実を掘り起こし、戦後沖縄史のリアルを伝える一翼を担っています。また、執筆活動などによって研究成果を積極的に発信。平和で豊かな国際社会の構築を目指しています。

戦後沖縄史を記録した
貴重な写真1万3000点のデジタル化を実現

戦後沖縄史を研究している村岡准教授。明治大学研究・知財戦略機構の研究推進員時代には、読谷村史編集室と連携して『沖縄戦後教育史・復帰関連資料』デジタルアーカイブ化プロジェクトを推進しました。戦後沖縄史を記録した貴重な写真1万3000点をデジタル化。インターネットで気軽に閲覧できる仕組みを整えました。
「きっかけは、2017年の夏に資料収集で読谷村史編集室を訪れたときのこと。未整理であったネガフィルムを偶然目にしたことで、沖縄を研究する一人としてきちんと後世に残さなければ、という気持ちになりプロジェクトを立ち上げることを決意しました」

米軍嘉手納基地の爆撃機B52の墜落事故に抗議するストライキ、佐藤栄作首相訪米の抗議大会、コザ騒動の引き金となった酒気帯び運転の米兵による女性死亡事故への反発など、戦後の沖縄の生々しい様子が伝わってくる写真がズラリ。本土復帰から50年以上が過ぎて、当時のことを知る世代が減り、史実が忘れ去られていくことを危惧する声があるなか、2019年にデジタル化が実現した際にはマスコミからも大きな注目を集めました。
「この例からも明らかなように、沖縄にはまだまだ未整理の資料が資料がたくさん残されています。研究の一環でそれらを見つけ出し、記録として保存して、世の中に提示していくことも、私の仕事だと考えているのです」

村岡准教授が戦後沖縄史を研究するうえで大切にしているのは、一次資料を徹底調査することです。一次資料というのは、いわば歴史の生の記録。沖縄県の公文書館に保存されている文献や、アメリカの公式文書などに目を通すこともあるそうです。
一次資料を徹底的に調査し、読み解くことで、戦後沖縄史の“知られざるリアル”が見えてくることがあります。そういったものを発掘し、後世に引き継ぐ橋渡し役を担うことが、戦後沖縄史の研究に携わる私のミッションだと言えるでしょう」

従来の通説と異なる、新たな事実と
出会えたときがうれしい瞬間

村岡准教授の研究テーマは、大きく2つです。1つ目が、「日米の沖縄政策が沖縄県民の政治意識に及ぼす影響」。沖縄住民の反米軍意識の変容と日米両国の沖縄政策との関係について検討し、史実を明らかにしていく取り組みを行っています。
「特に私が注目しているのは、米軍統治下の沖縄で発生した5つの事象。具体的には、『在沖米軍の基地建設のための強制土地収用と反米軍意識の形成過程』『朝鮮戦争からベトナム戦争に介入するまでの米軍基地の建設・拡張・強化』『日米両政府による沖縄選挙への介入とその実態』『沖縄の施政権返還に伴う日米両国の政治外交交渉』『沖縄住民間での日本復帰の在り方を問い直す動き』です」

もう1つの研究テーマは、「本土復帰後の沖縄県の公共政策」。47都道府県で最下位だった沖縄の経済復興、教育環境や医療の整備、戦争で破壊された文化財の復旧、琉球王朝時代にさかのぼる古文書と資料の保存など、研究材料には事欠かないといいます。
「本土復帰後の公共政策に関する活動を次世代に伝えていくために、研究成果を論文や書籍としてまとめることが急務。本研究で得られた成果は、他の都道府県にも発見をもたらすことになると信じています」

村岡准教授にとってこの研究の醍醐味は、まだ誰も触れたことがない一次資料を見つけ出し、これまでの沖縄研究との違いを明らかにした論文が書けたとき。研究のおもしろさを実感できると同時に、言葉で言い表すことができない喜びが得られるそうです。
「研究を通して、従来の通説とはまったく異なる、新たな事実と出会えることも少なくありません。また、研究成果を学会で報告した際などに、多くの質問を受けたときもうれしい瞬間。私の研究に対するみなさんの興味・関心が高いことを実感し、『自分がやってきたことは間違いではなかったんだ』と感じることができます」

この研究の最終的なゴールは、
平和で豊かな国際社会の構築

2022年、沖縄は本土復帰から50年の節目を迎えました。戦後間もない沖縄を知る方々が減りつつある今こそ、「若者たちに歴史的記憶を継承し、沖縄をさらに発展させていかなければならない」と、村岡准教授は語ります。
「沖縄の未来を考えると、米軍基地の反対運動やイデオロギーに終始したこれまでの沖縄研究から転換し、政策的・歴史的視点からアメリカの対沖縄統治政策や戦後沖縄史を検討すべきではないでしょうか。私の研究成果が、本土復帰後もクリアできていない基地問題の解決や沖縄の経済発展を実現する一助となるなら、これほどうれしいことはありません」

村岡准教授にとって研究の目的は、戦後沖縄史を一次資料から洗い直すことで、正しい戦後史を次世代に継承し、沖縄のさらなる発展のヒントを提示すること。沖縄が研究対象の村岡准教授ですが、その視線は世界に向けられています。
「研究の究極の目的は、長年米軍に占領されてきた沖縄に関するさまざまな研究成果を世界中に発信し、不戦と人類の平和を問いかけること。まさに今大切なことは、ウクライナを第二の広島や長崎にしないことです。地球上から戦争をなくし、平和で豊かな国際社会を構築することが、この研究の最終ゴールだと言えるでしょう」

情報学部でありながら、政治学に通じる研究を手がけている村岡准教授。情報を軸に、文理の枠を超えてさまざまな研究テーマを扱えることが、大和大学の情報学部の大きな特徴だといいます。
「情報学部では、最先端の技術を多数取り入れています。例えば、人工知能が導き出した予測データと、フィールドワークを通して得られたデータとを比較し、両者の差異を検討することで新たな発見へとつなげることが可能。そういった気づきは、フィールドワークをする際のアンケート用紙の作り方や資料調査の仕方にも活かすができるはず。また、データ解釈のスキルを身につけられることも、情報学部で学ぶ魅力の1つではないでしょうか」

プロフィール

村岡敬明 准教授

情報学部 情報学科

2020年 九州大学大学院地球社会統合科学府博士後期課程単位取得退学。2021年 論文博士(社会イノベーション学)取得。
その間、研究員として複数の大学に勤務。明治大学研究・知財戦略機構の研究推進員時代には、沖縄の貴重な写真のデジタルアーカイブ化プロジェクトを成功へと導く。2023年に大和大学の准教授に就任。

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