大和大学 大志を、まとえ。

検索したいワードをいれて検索してください

またはサイトマップもご覧ください

気候変動や水資源の枯渇をテーマに、
『持続可能な社会づくり』を目指す

天野 健作教授


社会学部
研究テーマ

地球環境を守り、
資源をめぐる紛争が起きない仕組みづくり

2030年に向けた世界的な目標であるSDGsの達成を目指し、各国や企業はさまざまな取り組みを進めています。そんななか、天野教授の研究室では地球環境問題やそれに関連した世界情勢と国際関係の研究に注力。『持続可能な社会づくり』を研究のゴールとし、身近でありながらスケールの大きなテーマに向き合っています。

限られた資源をめぐって、
紛争や戦争が起きない仕組みを考える

昨今のSDGsの盛り上がりからもわかるように、近年、世界的に地球環境問題への取り組みが活発化しています。そんななか、天野教授は地球環境を守っていくうえで、国と国との関係に注目。限られた資源をめぐって、紛争や戦争が起きないための取り組みに関する研究に携わっています。
「主な研究対象は、近年注目を集めている気候変動や、それにともなう水資源の枯渇などです。直近では2021年11月、水資源学会誌に『国連気候変動枠組み条約における報告書の意義付け』という論文を発表。気候変動による中国やインドでの水資源への影響について、両国の報告書などを読み解き、どういった対応や対策を行っているかを分析しました」。

天野教授によると、地球環境問題は点ではなく、線で捉えることが大事だといいます。つまり、国際関係や世界情勢にも目を向けることが重要なのだとか。
「例えば、メコン川は中国、タイ、ベトナム、カンボジアなど、6ヵ国にまたがる国際河川です。上流の中国がもしも勝手にダムをつくってしまったら、下流の国は『何を勝手なことをしているんだ!』とトラブルに発展しかねません。そうならないためにも、6ヵ国で協議を重ね、ルールや仕組みをつくることが大切なのです」。

国際社会には、「世界政府」のような組織はありません。だからこそ、メコン川のようにさまざまな国を流れる国際河川の水資源問題について考える際は、広い視野に立って物事を捉える必要があるのです。
「単一の権力を持った組織がないなかで、平和や秩序をどうやって保っていけるかを理論的に考えています。実社会で何が起きているかに目を凝らしながら、理論と現実を的確に結びつけることが大事だと言えるでしょう」。

国際水資源の問題は、
日本人にとって決して他人事ではない

現在、国際水資源の研究に携わっている日本の研究者は、数えるほどしかいないそうです。その理由は明解で、島国の日本は他国と河川を共有していないから。ところが天野教授によると、自分たちとは関係ない問題と思うのは大間違いだそうです。
「例えば、アジアで水資源が枯渇すれば、新疆ウイグル自治区の綿花の生産に大打撃を与えるでしょう。そうなると、そこの綿花を使ってつくられている日本のファストファッションが、安く買えなくなるかもしれない。つまり国際水資源の問題は、私たち日本人にとって決して他人事ではないのです」。

地球環境をいかに守っていくかを考える天野教授の研究は、「地球の未来」や「人類の将来」にも通じる壮大な物語。研究のフィールドは地球そのものと、とてもダイナミックです。
「しかも、私たちの生活を取り巻く環境すべてが研究対象になり得るでしょう。日々起きているニュースを丹念に追いながら、変化していくことと変化しないことを見極め、学問に落とし込んでいく作業を繰り返しています」。

天野教授にとって、研究のゴールは「幸せで豊かな世界をつくること」。そして、「誰一人取り残さないこと」だといいます。
「環境問題ばかりに執着しすぎて、環境を破壊する人間に対して牙をむく人もいます。アニミズム(自然崇拝)による、『人間非中心主義』の考え方です。こうした主張は行き過ぎですが、『人間中心主義』によって環境破壊の現状が生まれてしまったのは揺るぎない事実。しばしば『エコはエゴの問題』と言われるように、人間の自分勝手な利己的認識(エゴ)ではなく、自然や動物など周囲にも目を向け、多様性を尊重することが大切です。さらには、今生きている世代だけでなく、将来の世代のことも考慮したうえで世代間の衡平性を確保しなくてはなりません。つまり、私の研究の具体的な目標は『持続可能な社会づくり』だと言えるでしょう」。

アカデミズムとジャーナリズムの
架け橋として活躍していきたい

具体的なゴールを「持続可能な社会づくり」と定めている天野教授の研究は、2030年までに世界が達成すべき目標とされているSDGsに直結。学生たちは世界的に注目されているテーマについての研究を、深めていくことができます。
「私たちの生活に身近な食やエネルギーから、地球全体の人口爆発や貧困と格差の問題まで、幅広く学ぶことができます。しかも、学問の対象は自分たちの身のまわりのものすべて。私の授業や演習では、SDGsを軸にして学生が関心を持っている課題を追究していきます」。

アカデミズムはある意味、閉鎖的な世界です。研究者がいくら優れた論文を発表しても、それが社会全体に広がることはかなり稀。そんななか、新聞記者として国内外で20年以上活躍してきた天野教授は、アカデミズムとジャーナリズムの架け橋として活躍していきたいといいます。
「メディア出身の立場として、積極的に研究についての情報発信を行っていこうと考えています。特に今の時代は、SNSやYouTubeなど気軽に情報をアウトプットできるツールが多数。しかも、大和大学にはさまざまなメディア出身の教授や講師がいます。積極的に情報を発信していくことで、より多くの方に地球環境問題について興味を持ってもらいたいです」。

長い歴史のなかで、人類は幾度となく気候変動に見舞われ、天変地異による被害を受けてきました。地球温暖化が進むなか、この先そうしたリスクは一気に顕在化するでしょう。もしかしたら将来、人間が地球に住めなくなる日が来るかもしれません。
「一人の研究者の力は、非常に微々たるもの。けれども、小石を池のなかに投げ入れると、波紋が池の水面を伝わって大きく広がっていく『さざなみ効果』という言葉があります。『小さな小さな研究もいずれ大きな影響を及ぼす』という思いのもと、これからも研究を続けていきたいと考えています」。

プロフィール

天野 健作 教授

社会学部

同志社大学法学部卒業後、京都大学大学院で人間・環境学修士号を取得。その後は新聞記者として、国内外で幅広く活躍する。新聞社に在籍しながら、ニューヨーク大学や東京大学大学院で学び、2020年に21年勤めた新聞社を退社。現在は、大和大学社会学部の教授として活躍している。

HOME > 研究・教育 > 研究探求 @ 大和大学 > 気候変動や水資源の枯渇をテーマに、『持続可能な社会づくり』を目指す 〜 天野 健作 教授