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高齢者の日常に作業療法を取り入れ、
社会課題の解決の一翼を担いたい

瀬川 大教授


保健医療学部
リハビリテーション学科
作業療法学専攻
研究テーマ

地域作業療法学を通した、
高齢者のフレイル(虚弱)や介護の予防

超高齢社会の日本においては、自宅で暮らす高齢者の健康を維持する取り組みが非常に重要です。瀬川先生の研究室では、地域作業療法学をベースに、高齢者のフレイル(虚弱)や介護の予防について研究。地域の高齢者を対象に、身体機能検査や認知機能検査を実施するなどし、「地域×作業療法」の新たな可能性を探っています。

地域の高齢者を対象に、
身体機能検査や認知機能検査を実施

 作業療法士は、病気や事故で障害を負った方や、運動機能が低下した方々に寄り添い、社会生活への復帰をサポートするリハビリテーションの専門家。大和大学では、その育成に力を注いでいます。国家試験の合格率は、常に全国平均以上。特に、2020年3月の卒業生は合格率100%という驚異的な結果を残しています。同校の作業療法学専攻で学ぶ魅力は、高い合格率だけではありません。超高齢社会における健康寿命延伸に取り組むことで、社会課題の解決の一翼を担うことができるのです。
「私が掲げている研究テーマは、地域作業療法学です。元気な方も、介助が必要な方も、住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、予防という観点から支援を行うというもの。それに付随して、高齢者のフレイル(虚弱)や介護の予防につながる研究も進めています」。

フレイルというのは、健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態を指します。超高齢社会の日本では、これを予防するための取り組みに注目が集まっているところ。瀬川先生は学生たちとともに、大学周辺の公民館などで健康測定事業を展開し、地域の高齢者を対象に身体機能検査や認知機能検査を行っています。
「身体機能検査を例にあげると、握力や歩くスピード、バランス感覚などの検査を行い、年齢の平均値よりも数値が低い方には最適な運動法を指導。地域で暮らす高齢者の方々の健康に対する意識を高めると同時に、低下した運動機能の回復を図っています」。

フレイルを予防するために必要なのは、運動だけではありません。瀬川先生によると、身体を動かすのと同じくらい、人とのつながりも大切になってくるのだとか。
「そこで、私たちは健康測定事業以外の取り組みもスタート。例えば、吹田市の『北大阪健康医療都市』内にある健都ライブラリーで、裁縫や革細工を楽しむイベントを開催しています」。

高齢者の心身の健康問題を、
実践を通して感じて学ぶ

コロナ禍の今は、思うように外出できない高齢者が多く、特に独り暮らしの方は精神的にも身体的にも健康でない傾向が強いと語る瀬川先生。地域の公民館などでの身体機能検査や認知機能検査を、実施できない期間も多かったそうです。
「そういったなかでも、自粛を余儀なくされている高齢者とコンタクトを取るために、学生たちが健康に関する情報などを発信するかわら版を制作。直接会えなくてもかわら版を通して少しでも地域とつながる機会を持ち、身体的にも精神的にも健康になってもらえたらと思っています」。

「かわら版が心の支えになっている」というコメントが寄せられるなど、この試みは地域の高齢者の方々から好評です。直接的なコミュニケーションが取れない状況下でも、高齢者のフレイルや介護の予防に向けてできることがある、ということが証明されたと言えるでしょう。
「ただそのいっぽうで、学生たちと高齢者とのやりとりを通して、コロナ禍における独り暮らしの高齢者の困りごとや課題が浮き彫りになってきました。『日々一人で過ごすことで気分が滅入っている』『体力が低下したと感じる』といったコメントを見ると、胸が痛みます」。

健康測定事業やモノづくりイベントを通して、高齢者の方々が笑顔で楽しんでいる姿を見ることが、瀬川先生や学生たちのやりがいになっているそう。人生の大先輩からたくさんのことを教えてもらえるのも、この取り組みの魅力だといいます。
「高齢者の心身の健康問題について、机上ではなく直接自分の肌で感じられる点が、学生たちにとって大きな学びになっています。コロナ禍で今はなかなか活動できていませんが、高齢者の健康への意識を高めることが、フレイルや介護の予防につながっているということを、多くの学生に体感してもらいたい。それと同時に、私たちの取り組みが地域の高齢者の方々に少しでもお役に立てれば、これほどうれしいことはありません」。

世代間交流を通して、
患者さんに深く寄り添うスキルが身につく

作業療法は、心と身体に病や障害を抱える子どもからお年寄りまでの幅広い方を対象とした、「生きていく力」の回復を目指すリハビリテーション。かつて病院に勤務していた瀬川先生は、たくさんの患者さんと関わってきました。
「強く印象に残っているのは、入院当初、寝たきり状態だった患者さん。二人三脚でリハビリテーションを続けていくうちに、退院される頃には自分の足で歩けるまでになったのです。作業療法士という仕事の醍醐味は、自分が関わった患者さんが回復していく様子を目の当たりにできること。ぜひ多くの方に、この仕事の魅力を伝えたいと思っています」。

また、作業療法士は患者さんに寄り添い、一人ひとりの内面にも深く関わる仕事。患者さんの価値観や大切にしていることなどを把握しながら、じっくり向き合う姿勢が欠かせないそうです。
「この仕事をするうえで大事なのは、『人と関わることが好き』という気持ち。また、患者さん一人ひとりの希望を引き出すためのコミュニケーションスキルも大切になります」。

そういった気持ちやスキルを育むうえで、大きく役立つのが瀬川先生が中心となって進めている、地域の高齢者に関する研究や活動。世代を超えた交流を通して、きっと人間的にも大きく成長することができるでしょう。
「学生には、いろいろな世代や性別の方と関わりを持ち、幅広いことに積極的に挑戦してもらいたいと思っています。作業療法と直接関係がないことに思えても、将来プロとして多くの患者さんや高齢者の方々と接するなかで、きっと役立つことがあるはずです」。

プロフィール

瀬川 大 教授

保健医療学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻

大阪保健医療大学保健医療学部卒業。2008年から特定医療法人一輝会 荻原みさき病院に勤務する。約10年間の現場経験を活かし、2018年に大和大学へ。作業療法学専攻の先生として学生の指導にあたりながら地域とも連携し、高齢者の健康問題にも取り組んでいる。

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