

映像や広告の制作を通じて、
多くの人の心を動かす表現を追求
映像や広告の制作を通じて、
多くの人の心を動かす表現を追求
田村 直樹教授
人の心を動かし、
集客を実現する広告の研究
営業の仕事を経験した後、大学院でセールスプロモーションを学び、理論と実践を融合させた専門知識を身につけた田村教授。現在はゼミで、ミュージックビデオや企業CMなどの制作指導を行い、学生たちに人の心を動かす映像表現の力や効果的なメッセージの伝え方をレクチャーしています。将来的には、大学発のベンチャービジネスとして広告代理店を立ち上げる予定。学生たちに実践の場を提供しながら、次世代のクリエイター育成に注力しています。

人の心を動かすために大切なのは、
共感を生むこと
もともと商社や保険会社で、セールスの仕事に携わっていた田村教授。「お客さまを“買いたい”という気持ちにさせるにはどうすればいいのか」を追求したいと考え、大学院に進学して博士号を取得しました。そして、セールスプロモーションについて学ぶうちに、人の気持ちを動かす仕組みに興味を抱き、その研究にのめり込んでいったそうです。
「人の心を動かすために大切なのは、共感です。ある食べ物のCMでスーパーマンが『おいしい』と言っても、人はなかなか共感できません。なぜなら、スーパーマンは自分とかけ離れた存在だからです。それよりも、自分を投影できる役者さんが『おいしい』と言うほうが、心が動くでしょう。自分にも関係があるのかも、と感じることで購買意欲につながるのです」
現在、田村教授のゼミではミュージックビデオの制作に取り組んでいます。学生たちに好きな曲を選んでもらい、ドラマの主題歌という設定でミュージックビデオを制作。その際、ドラマの内容も自分たちで考え、世界観に合わせた映像作品を手がけているのだとか。
「絵コンテを描いて構成を考え、自分たちで撮影を行うなどして素材を集め、編集ソフトを使ってひとつの作品として映像を仕上げる、というのが一連の流れ。ただ映像を制作するのではなく、見る人の心をどう動かすかを考えながら取り組んでもらっています」


今後は吹田市の商店街と連携し、リアルなCM制作に挑戦する予定。学生たちはクライアントのニーズを自ら聞き取り、それをもとに企画を立ててCMを制作していくそうです。
「授業で習ったマーケティングやセールスの理論をベースに、プロ意識を持って広告代理店と同じような視点で制作に携われるのが特徴。実践を通して、学生たちは多くの気づきや学びを得られるでしょう」


情報学部の学生に、
映像や広告のクリエイターという選択肢を提供
田村教授によると、人の心を動かすうえで、CMなどの映像コンテンツは大きな力を持っているそうです。動画は視覚と聴覚という複数の感覚を同時に刺激できるため、文字情報や静止画に比べて、より深く強い印象を与えられるのだとか。
「チラシなどの紙の広告は、自分の意志で手に取って見ないと情報が入ってきません。しかし、映像は違います。特にテレビCMのようなものは、目を閉じていても耳から音が入ってきてしまう。音声は無意識のうちに脳に届き、CMのメッセージが知らず知らずのうちに意識に刷り込まれていくのです」
また、今の学生たちの多くは、テレビを観ず、新聞も読まず、ラジオもほとんど聴きません。では、何をしているのかと言えば、インターネットで動画を視聴することが圧倒的に多いのです。つまり、映像制作のスキルは現代の情報社会で強力な武器になると、田村教授はいいます。
「一般的に、情報学部を卒業したらプログラマやデータアナリストの道に進む学生が多いでしょう。ただ、なかにはそうした職種が必ずしも向いていない人もいるはず。学生たちの将来の可能性を広げるために、映像や広告のクリエイターという選択肢を提供したいと考えています。というのも、情報学部の学生はパソコンやITツールを簡単に使いこなす素養があり、動画制作は彼らにフィットしやすいと言えるからです」


現在は映像を制作するツールが簡単に手に入り、アップロードできるプラットフォームも充実しています。しかし、自ら率先して映像を制作しようと考える人はそれほど多くありません。そのため、課題の一環として映像制作を経験すると、「やればできるんだ」と自分の可能性を実感し、映像づくりの楽しさに目覚める学生が多いそうです。さらに、実際に取り組むことで『もっと上手くなるにはどうすればいいか』という課題意識が芽生え、主体的に行動するようになるのだとか。
「パソコンやスマホ、映像編集ソフトなどのツールが揃っている今、映像制作はやろうと思えば誰でもできる時代です。だからこそ、学生たちの背中を押してあげたいと考えています。また、情報学部出身ながら映像や広告のクリエイターとして活躍できる環境を提供し、理論だけでなく実践的なスキルを身につけられるようサポートしていきたいと思っています」


大学発のベンチャー企業を立ち上げ、
学生にリアルなビジネス体験を
京都の名所をテーマにしたプロモーションビデオ制作のために、ゼミ合宿を行いました。さらに、ゼミでYouTubeチャンネルを立ち上げ、学生たちの作品を広く世の中に発信していく構想も進んでいるそうです。
「映像制作を通じて発信を続けることで、プロの目にとまって仕事につながる可能性も生まれるでしょう。実際、そうしたきっかけから大きなチャンスを掴んだ例もあります。日本を代表する怪獣映画が、2024年のアカデミー賞でVFX(視覚効果)賞を受賞しました。高い評価を受けた映像技術を手がけたのは、趣味で自主制作のVFX動画をネットに投稿していたクリエイターたち。監督がその才能を見出して、スカウトしたのです。趣味からスタートし、アカデミー賞という快挙を成し遂げた、夢のあるエピソードだと言えるでしょう」
ゆくゆくは大学発の広告代理店を立ち上げ、学生たちに実際のビジネス体験の場を提供したいと考えている田村教授。映像や広告のクリエイターに対する潜在的なニーズは、実はたくさん存在するといいます。
「例えば、アマチュアミュージシャンのミュージックビデオ制作もそのひとつ。自撮りでアップするだけではつまらないので、クオリティの高い映像を使って世界観を表現し、YouTubeなどで多くの人に届けたいと考えているミュージシャンはたくさんいるはずです」


田村教授によると、人の心を動かす映像制作のスキルは、就職活動においてもおおいに役立つとのこと。
「応募先の企業CMを手がけて、面接の場で『ぜひ観てください!』とアピールすれば、大きなインパクトを与えられるでしょう。しかも、そのクオリティが高ければ、企業側に『ぜひうちに来てほしい』と強く思わせることができる。ゼミで身につけた映像制作の考え方やノウハウを活かし、採用担当者の心を動かすこともできるのです」



田村 直樹 教授
商社や保険会社でセールスの仕事に携わった後、大学院でセールスプロモーションを学んで博士号を取得。その後、関西外国語大学や岡山商科大学で准教授として経営学やマーケティングの教育および研究に携わる。2024年に大和大学に着任し、教授として活躍している。