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地域経済の活性化に向けて、
地域金融機関が果たすべき役割を探究

曲 明輝准教授


政治経済学部 経済経営学科
研究テーマ

日本を豊かにするカギを握る、
地域金融と地域経済の活性化

地域経済のさらなる発展には、地域に根ざした金融機関の活躍が必要不可欠です。ただ、経済や社会情勢の変化にともない、地域金融機関は従来のビジネスモデルが通用しづらくなってきているのが現状。そんななか、曲准教授は地域金融機関のビジネスモデルの再構築や、地域経済の活性化に向けた地域金融の役割について研究を進めています。

経済や社会情勢の変化で、
地域金融機関の経営環境は厳しい状況に

特定のエリアに根ざした金融機関として、地方銀行や信用金庫・信用組合は地域活性化の一翼を担っています。地方銀行とは、各都道府県を主な営業基盤とする銀行のこと。いっぽう信用金庫・信用組合とは、相互扶助の精神に基づいて、出資者である組合員から預金を集めて融資を行う金融機関のことです。
「これら地域金融機関は、預かった預金を地元企業や個人に融資することで収益を上げるとともに、預金・貸出・決済業務などを通して、地域経済を支える重要な役割を果たしています」

ところが近年、地域金融機関の経営環境は厳しさを増しています。その主な要因は、「人口や企業の減少による資金需要の伸び悩み」「金融緩和政策による超低金利の長期化」「フィンテックなど異業種参入による競争激化」にあるそうです。
「人口減少は、地域の消費の低迷や生産活動の低下に直結。その結果、地域経済の規模縮小へとつながります。また、超低金利の長期化によって、地域金融機関の収益の大半を占める貸出金の利息収益が減少。さらに、金融とITが融合したフィンテックの登場により、IT企業などの異業種が続々と銀行業に参入し、競争が激しくなってきているのです」

経済や社会情勢の変化にともない、従来のビジネスモデルが通用しなくなりつつある地域金融機関。その経営環境は、今後より厳しい状況に置かれることが予測されます。そんななか、曲准教授は地域金融と地域経済の活性化について研究を行っています。
「具体的には、地域金融機関のビジネスモデルの再構築や、地域経済の活性化に向けた地域金融の役割についての研究です」

地域経済の発展をサポートする、
持続可能なビジネスモデルの再構築が急務

すでに地域金融機関では、店舗統合による経費削減や経営統合、業務提携など、さまざまな経営改善を図るとともに、資金需要が減少した場合に対応できる新たなビジネスモデルへの転換が進められています。
「地域金融機関が経営を安定させて、事業を拡大していくためには、営業基盤である地域経済の発展が必要不可欠。つまり、地域金融機関は地域特性に応じた金融サービスを提供し、地域経済とともに発展できる、持続可能なビジネスモデルの再構築が求められているのです」

また、人口減少や地域経済の停滞にともない、地域金融機関には地域企業の生産性向上や、地域経済の活性化に向けたさらなるアクションも期待されています。
「これまでも、ビジネスマッチングや商談会の開催、産学官の連携など、さまざまな取り組みが行われてきました。近年では、地域金融機関が商社を設立することがトレンドに。企業に代わって、地元の名産品などのプロモーション活動や販売活動を行っています」

近年、国も地域金融機関の変革を積極的に後押ししています。例えば、地域金融機関が上記のような地域活性化に貢献する会社を設立する際の出資上限を緩和しました。
「そのほか、店舗統合を行った際の初期費用に対して、補助金を交付するよう法改正を行いました。日銀も、経費削減や経営統合に取り組むことを条件に、当座預金の金利を年0.1%上乗せする制度をスタート(2022年度までの時限措置)させています」

研究の目的は、地域金融と地域経済が
ともに成長する好循環を実現すること

地域金融機関の組織再編や新たな取り組みからもわかるように、地域経済の活性化に向けた地域金融のあり方は、大きな転換期を迎えていると言えるでしょう。曲准教授によると、現在進めている研究の目的は2つあるそうです。
「まず、金融機関の健全性や収益性の観点から、地域金融機関の中長期的な経営課題を明らかにし、現状を打開できる経営改革やビジネスモデルの転換を探ること。また、少子高齢化が進む日本において、地域経済の活性化に向けて地域金融機関が果たすべき役割を検討したいと考えています」

そのために、曲准教授は個別の地域金融機関の取り組み事例などを研究対象とするだけでなく、地域金融機関全体や地域経済のデータを活用。計量経済学の手法を使って、その実証分析を行っています。
「この研究のゴールは、地域金融と地域経済がともに成長する好循環を生み出すこと。それぞれの地域経済が活性化すれば、日本全体も豊かになります。このシナリオの実現のためには、さらなる制度改正や政策の後押しが必要不可欠。将来的には、研究結果を踏まえて、具体的な政策提言をしていきたいです」

曲准教授によると、地域経済の活性化のためには、金融分野における人材の育成や確保が重要な課題だとか。
「学生には金融だけでなく、地域経済にも関心を持ち、地域に根ざした地域金融機関と地域経済との関係について理解を深めてもらいたいです。そして将来、大学で学んだことを地域に還元し、地域経済の発展を支えるキーパーソンとして活躍していってもらいたいと考えています」

プロフィール

曲 明輝 准教授

政治経済学部 経済経営学科

中国の大学院で、日本経済の研究に携わる。その後、さらに学びを深めるべく来日。京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会外国人特別研究員などを経て、2018年に大和大学へ。現在は、政治経済学部の准教授として活躍している。

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