11月29日(水)、政治経済学部の1年生を対象とする「キャリア研究I」では、本学の特任教授で防衛庁長官や自民党の副総裁を歴任された山崎拓先生による特別講義、「わが国の外交・安全保障概論」を実施いたしました。第3回目の講義は「ポスト冷戦時代(1991年〜2023年)の国際政治」と題され、国際平和の脅威となる次の3つの「戦域」についてご解説いただきました。(1)NATOの東方拡大に対するソ連邦解体後のロシアの反転攻勢、(2)中東情勢が火薬庫、(3)中国の米国を凌ぐ大国化への野望:新冷戦時代へ
ガザ同様、罪なき市民の大量虐殺が懸念されるウクライナ侵攻をめぐっては、加盟国の集団的自衛権行使の場としてのNATOの東方拡大を通じた米ロの緊張関係が解説され、また、新たな冷戦時代をもたらすと予想される米中関係については、1月の台湾総統選挙の結果を受けて、今後の講義で台湾海峡危機について詳しい分析をいただけるとのことでした。
今回の講義で特に貴重な学びとなったのは、小泉政権の外交と安全保障を支える立場から中東を歴訪し要人と会談なさった山崎先生ご自身のパレスチナ問題への深い関わりとご考察でした。1993年のオスロ合意によるパレスチナとイスラエルとの「2国家解決」はアラファトPLA議長とイスラエルのラビン首相亡き後、死文化したと言われ、現在、紛争に至っているものの、わが国は両者と対話できる立場を活かして即時休戦と人質解放、そして、ガザ民衆への人道支援を求めていくべきであると説かれました。
ご講義の最後には、例えば、イラク戦争開戦前夜に行われた小泉首相とブッシュ大統領の電話会談で先生が首相になさった進言の詳細といった質問が学生から出され、日本外交の中枢におられた山崎先生にしかできない貴重なご教示をいただく機会となりました。