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TEACHERS

教員の紹介
名倉 賢

氏名 名倉 賢
職位 教授
学部 情報学部
学科・専攻 情報学科
専門・研究分野 情報学の実務、理論物理学
研究キーワード 情報科学、データ分析、数理モデル、EBPM、行政改革、IoT、ミラー対称性、経済物理学
学部担当科目 データサイエンス基礎、哲学入門、数学全般
関連リンク
学位 博士(理学)東京大学
実務経験
現在の研究内容・課題 【情報学の実務】情報科学を活用した政策立案、特にEBPM(エビデンスに基づいた政策立案)

(1)支出金額及び応札者数が従う数理モデル[1,2]
政府情報システム支出に係る公表データを分析して、支出金額及び応札者数が従う確率的数学モデルを推定した。具体的には以下の知見が得られた。ⅰ)支出件数は支出金額をパラメータとした対数正規分布に従う。ⅱ)この分布はランダムに連続的に予算を分割する“綱引きモデル”で説明できる。ⅲ) 応札者数は、“N=0が観測されないポアソン過程(制限付きポアソン分布)”に従うと考えられ、そのポアソンパラメータは支出金額のあるべき関数(減少関数)となっている。

(2)応札者別の落札率が従う確率分布[3,4]
1者の場合、落札率はベータ分布で記述できる。落札率X=100%付近で冪(b=1/4~1/3程度)の特異点がある。つまり、ある種のスケール則が観測される。談合等の不正行為がない場合、各応札者の意思決定は独立に行われるはずである。従って、2者の落札率は、2つの独立なベータ分布Xの最小値Y=min(X,X)として記述できる。3者以上も同様である。 しかし、実際のデータでフィッティングを実施してみると、2者以上の場合、各応札者Xの平均は1者のときと比べて低くなった。(一者0.96→2者以上0.9程度)。つまり、各応札者は他の応札者がいるときは、入札行動を変化させて、より低価格で入札している。よって、2者以上では1者よりもより強い競争促進効果があることが強く示唆される。さらに、2者からより低い価格の応札者を選択するによる価格低減効果もある。(最低価選択効果)具体的には、1者のときX=96%であるが、2者では競争促進により各応札者のX=90%へ、さらに2者の最小値Y=min(X,X)を選ぶことで、Y=80%に低下する。

(3)政府調達に係るEBPM[5]
①と②の研究成果を総合させることで政府調達に係る「データ起点のロジックモデル」を提唱したい。具体的は、ⅰ)各府省庁の調達活動は「1件当たりの調達金額は平均約2500万円、標準偏差約1000万円程度の対数正規分布」である。ⅱ)これを「(事務負担を考慮しつつ、例えば)平均して2分割して調達」する。ⅲ)調達を2分割すると、「概ね1者応札の割合は約10%減少する」。一方、「一者応札の場合に比較して、落札金額は約20%減少」することから、よって全体では10%×20%の約2%の調達額の減少が期待できる。ⅳ) 全政府の年間調達額は約8兆円であることから、その2%の約1600億円の税効果と推測できる。
[1]「政府情報システム支出データの分析」、2019年3月21日、明治大MIMS研究会
[2]「政府情報システム支出データの分析」、2019年6月5日、RIETI研究プロジェクト「経済ネットワークに基づいた経済と金融のダイナミクス解明」
[3]「公開データから見える政府調達の数理的構造」、2020年9月15日、明治大MIMS研究会
[4]「政府調達のデータ分析」、2020年1月7日、東大先端研西成研究室セミナー
[5]「政府調達のEBPM」、2020年12月22日、明治大MIMS研究会
主な研究業績 1.「情報学の実務」の関連分野
(1) 内閣官房 行政改革推進本部事務局での実務
内閣官房行革事務局において、全政府の政府調達活動を取りまとめて報告書「調達改善の取組に関する点検結果」[6]を作成し、内閣総理大臣に報告した。主担当は、政府調達改善に係るデータ分析である。
(2) マイナンバー利活用の提言
産業競争力懇親会(COCN)2010年度プロジェクト「個人情報や企業情報を活用するためのクラウドコンピューティング基盤の整備」への参画[7]
(3) 自律分散的なネットワーキングの提言
2016年3月、シンポジウム「IoTの新地平~日本が勝ち抜くための新戦略」[8]を開催して、広崎、西成、曽根高、瀧、松永らと共に「人工知能によってプラットフォームが自律分散的に環境の変化に応じてネットワーキングを変化させる」という「ポリモルフィック・ネットワーキング」というコンセプトを提唱[9]した。また、自律分散型のネットワークのコンセプトをさらに発展させ、翌年3月にも一般公開シンポジウム「IoT都市の新展開~ポリモルフィック・ネットワーキングの都市的応用~」[10,11]を企画開催した。
[6] 令和元年度上半期調達改善の取組に関する点検結果、2020年3月27日、内閣官房行革事務局
[7] 産業競争力懇親会(COCN)2010年度プロジェクト「個人情報や企業情報を活用するためのクラウドコンピューティング基盤の整備」、2011年3月4日、http://www.cocn.jp/report/thema30-L.pdf
[8] IISEシンポジウム「IoTの新地平 ~日本が勝ち抜くための新戦略」、2016年3月18日、http://www.i-ise.com/jp/information/symposium/2016/sym_160318/sym_160318_iot.html
[9]「IoTを超えるための動的な戦略~多形的なネットワーク論~」2016年3月18日、http://www.i-ise.com/jp/symposium/sym_160318_data/nagura.pdf
[10] IISEシンポジウム「IoT都市の新展開ポリモルフィック・ネットワーキングの都市的応用~」、2017年3月22日

2.「理論物理学」の関連分野
(1)超弦理論のミラー対称性
杉山、秦泉寺らと共に、一連の研究により「ミラー対称性の概念は一般次元でも有効である」ということを示してきた[11,12,13]。ミラー対称性(mirror symmetry)とは、カラビ・ヤウ多様体と呼ばれる幾何学的な対象の間で観測される「対」である。一見すると幾何学的には全く異なった構造をもつ2つカラビ・ヤウ多様体が、その上で超弦理論を計算すると等価となるというものである。ミラー対称性は理論物理学のみならず現代数学、特に幾何学の研究に大きなインパクトを与え、現在も最先端の研究が続いている。
(2) 経済物理学の分野
金融市場を熱統計力学的モデルで解釈する研究を行った。具体的には、①市場参加者の投資行動は(各々リスクを最小化しリターンを最大化するべく行動するというよりも)情報エントロピー最大化の原理に従う、②ラグランジュ乗数βは市場の過熱状態を測る「(逆)温度」と解釈できるものであり、物理系とは異なりβが負となる状態「リスク選好的」も存在しうる、③金融市場は理想気体モデルよりも輻射場の熱統計モデルと類似している、④金融システムにおいては金利の高い債権から金融機関等を通じて金利の低い債権へと資金は自発的にながれる一方で、実経済では反対に金利の高い投資先に資金が流れることで、経済システム全体として資金が還流する「電池モデル」の提唱、など[14,15]である。
[11] Masaru Nagura, Katsuyuki Sugiyama, Mirror Symmetry of K3 and Torus, Int. J. Mod. Phys. A10 (1995) 233-252
[12] Masao Jinzenji, Masaru Nagura, Mirror Symmetry and An Exact Calculation of N-2 Point Correlation Function on Calabi-Yau Manifold embedded in CP^{N-1} , Int.J.Mod.Phys. A11 (1996) 1217-1252
[13] Masaru Nagura, Mirror Symmetry on Arbitrary Dimensional Calabi-Yau Manifold with a few moduli, Mod. Phys. Lett. A10 (1995) 1677
[14]「金融市場の熱統計力学」素粒子論研究99-1 (1999), P1
[15]「経済現象の熱力学への還元」総合研究大学院大学グループ研究「新分野の開拓」論文集 新分野の開拓’99, 6.5, P84-89
主な所属学会