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話すことに障害がある人に向けた、
新たなリハビリテーション手法の開発に挑む

樋口 直樹先生


保健医療学部
総合リハビリテーション学科
言語聴覚学専攻
研究テーマ

運動障害性構音障害に有効な
リハビリテーション手法の開発

脳卒中などの病気が原因で、発声や発音がうまくできない運動障害性構音障害について研究を行っている樋口先生。具体的には、運動障害性構音障害に有効なリハビリテーション手法を開発して、その治療効果を立証しようとしています。すでに独自のリハビリテーション手法を確立し、現在はその治療効果を科学的に立証する研究を進めているところです。

運動障害性構音障害の
リハビリテーションの現状を変えたい

言語聴覚学とは、「話す」「聴く」「食べる」ことに障害がある方を支援するリハビリテーションの知識や技術を学ぶ学問。樋口先生は、その一つである運動障害性構音障害の専門家として活躍しています。
「運動障害性構音障害は、脳卒中などの病気が原因で、発声や発音が思うようにできなくなる状態のこと。患者さんの数が多いわりに、有効なリハビリテーションの手法が確立されていないという現状があります」。

樋口先生によると、その理由は人間の発声や発音のメカニズムが非常に複雑だからだそう。理学療法や作業療法のように、「これをやればこういった効果が得られる」といった明確な手技がなかったといいます。
「運動障害性構音障害のリハビリテーションの現場では、『音読をする』『舌を動かす』といったように、患者さん自身が行うものが主体。なぜ、プロの手によるリハビリテーションが受けられないのか、といった患者さんからの不満の声も少なくありませんでした」。

「そういった現状を変えたい」と立ち上がったのが、樋口先生です。15年ほど前から、運動障害性構音障害に有効なリハビリテーション手法の開発を目的とした研究をスタートさせ、2015年には『徒手的言語聴覚療法研究会』を立ち上げました。
「理学療法や作業療法のテクニックを応用するなどし、トライ&エラーを繰り返しながら、手技によるリハビリテーション手法を開発。2021年9月に研究の成果をまとめた『脳卒中後の構音障害への徒手的アプローチ』(三恵社)を出版したところ、大手通販サイトのジャンル別ランキングで1位を獲得するなど、大きな反響をいただくことができました」。

患者さんが喜び、現場のプロが驚く、
リハビリテーション手法を開発

樋口先生が中心となって開発した新しいリハビリテーション手法の一つが、舌へのアプローチです。舌が上方向に動く前に舌中央部へ、下方向へ動く前に舌下面へタッピングを行うというもの。また、甲状軟骨の位置を補正する喉頭へのアプローチや、発話中に口角などに刺激を与える顔面へのアプローチなどもあります。
「今でも忘れられないのは、口パク状態で声をほとんど発することができなかった患者さん。私が開発したリハビリテーション手法を試したところ、その日のうちに効果が表れ、一週間後には声が聞き取れるまでに回復したのです」。

即効性が期待できるとあって、樋口先生が開発したリハビリテーション手法は、医療従事者の間でも大きな話題に。現場から、「こんな変化は初めてだ」と驚きの報告が続々届いたといいます。
「今はまだ、多くの患者さんや医療従事者の方々に、その効果を体験していただくフェーズ。全国の主要都市で研修会などを積極的に開催し、現場への普及を図っていきたいと考えています」。

現在は、開発した新しいリハビリテーション手法を、さらに科学的に裏付ける研究を進めている樋口先生。人体を簡略化した生体モデルを使って病的音声の実験などを行い、知見を得ようとしています。
「3Dプリンターなどを活用して生体モデルを作成し、どのように雑音が出るのかなどの研究を行っています。研究のゴールは、開発したリハビリテーション手法の治療効果を科学的に立証すること。科学的根拠を明確にすることが、新しいリハビリテーション手法を定着させるポイントになるでしょう。そして結果的に、運動障害性構音障害で苦しんでいる患者さんに、より効果的にアプローチできるようになると考えています」。

他の動物にはない、
人間独自のメカニズムの解明にも役立つ研究

新しいリハビリテーション手法を開発し、それを体系化していくには、とても時間がかかります。しかし、樋口先生が高いハードルに挑むのは、運動障害性構音障害で苦しんでいる患者さんのため。それと同時に、この研究を通じて人間の発声や発音のメカニズムを解明したいと考えています。
「人間の発声や発音に関する運動のすべてが、数値化できているわけではありません。運動障害性構音障害のリハビリテーション手法の開発を通して、そのメカニズムの解明に少しでも近づきたいと考えています」。

言語を操れる動物は、人間のみ。親の言葉を子どもが耳で覚えて、自然に話せるようになるなど、他の動物にはない独自のメカニズムに、樋口先生は強い関心を覚えているそうです。
「私は学生時代から、ずっと言語学に向き合ってきました。運動障害性構音障害で苦しんでいる多くの患者さんに貢献できることに加えて、人間のメカニズムに触れられるのが、この研究の醍醐味だと感じています」。

樋口先生の研究に加わることで、学生たちは運動障害性構音障害に関する新たなリハビリテーション手法が、業界のスタンダードになっていく瞬間に立ち会えるでしょう。さらに、発声や発音に関する障害を科学的視点でとらえることで、人間独自のメカニズムに関する知識を深めることができます。

「大和大学では、言語聴覚士の国家試験において、84.2%の合格率(2020年3月卒業生)を誇っています。これは、全国平均65.4%を大きく上回わる数字。着実に、この業界を担う人材へと成長していける環境が整っています。また、私と一緒に研究に携わることで、リハビリテーションの施術者としてだけでなく、研究者としての視点を養えるのも大きな魅力だと言えるでしょう」。

プロフィール

樋口 直樹 先生

保健医療学部 総合リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻

武蔵野大学大学院人間社会研究科人間学専攻言語聴覚コース修了。広島都市学園大学の言語聴覚専攻科の先生などを経て、大和大学へ。長年、運動障害性構音障害に有効なリハビリテーション手法の開発に取り組んでおり、『徒手的言語聴覚療法研究会』の代表としても活躍中。

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